Tyrolit 社:ESG データの精度向上によるコンプライアンス体制の強化

データに焦点を絞り、変革を促進
研磨工具とサービスのプロバイダーである Tyrolit 社は、自社のコアバリューの 1 つにサステナビリティを掲げており、すべての活動が、人、環境、社会に対してポジティブな影響をもたらすことを目指しています。同社は、SAP Sustainability Control Tower やその他のさまざまな SAP ソリューションを活用することで、グループ全体の ESG データに円滑にアクセスし、自社の目標に沿ってデータを特定、収集、計算、管理することができるようになりました。
| 業種 | 地域 | 企業規模 |
| 産業用機械製造 | オーストリア、シュヴァーツ | 従業員数:4,500 人以上 |
財務、業務、リスク評価の KPI と連携している ESG 指標の数
ESG レポート自動化の恩恵を受けているマネージャーの人数
2006 年以降の本社における CO2 排出量の年間削減量
Tyrolit Group、環境管理責任者
変化し続けるサステナビリティレポートの法規制に備える
研削・ドレッシングツールおよび建設業界向けシステムの大手プロバイダーである Tyrolit Group は、100 年以上にわたって、さまざまな産業の技術進歩に貢献してきました。オーストリアのアルプス中心部に拠点を置き、家族的な価値観とグローバルなビジョンを兼ね備え、140 カ国以上に向けて輸出を行っています。
国際的な業務に携わる同社では、EU の企業サステナビリティ報告指令 (CSRD) などの報告基準に対応するため、世界中の環境・社会・ガバナンス (ESG) データを管理できる、信頼性の高いシステムが求められていました。しかし、同社では、ESG レポートのシステムが統一されておらず、業務全体やサプライチェーン、ビジネスパートナー間におけるデータの統合・検証・共有にスプレッドシートが使用されていたことから、大きな課題が生じていました。
そこで Tyrolit 社は、この ESG データを一元管理し、サステナビリティレポートを財務報告基準に整合させることができるソリューションの導入に着手しました。あわせて、原材料のリサイクルや有害物質の代替などの分野において、ベンチマークや目標を設定し、インサイトを得ることができるアナリティクス機能も必要だと考えていました。さらに、ESG データや製品のカーボンフットプリントに関するコンプライアンス対応において、日々変化する顧客の期待に応えるための、強力なサポートも求めていたのです。
Tyrolit Group、環境管理責任者
統合された ESG プロセスを支えるツールセットの構築
Tyrolit 社は、SAP Sustainability Control Tower ソリューションを SAP Business Technology Platform (SAP BTP) 上で使用することで、データ収集からシステム統合、レポート作成までのサステナビリティプロセスを包括的にマッピングし自動化することができると判断しました。SAP Sustainability Control Tower を SAP Cloud ERP Private オファリングや SAP Sustainability Footprint Management ソリューションと連携させることで、Tyrolit 社は SAP ソフトウェアやサードパーティーソースからのデータ収集を自動化し、経営レポートの一部として ESG レポートを作成できるようにしたのです。SAP Sustainability Control Tower と SAP Analytics Cloud ソリューションのダッシュボードにより、ESG データを直感的にモニタリングできるだけでなく、後者の計画機能によりサステナビリティ目標を測定できるようにもしました。また、スプレッドシートの代わりに、SAP Fiori ユーザーエクスペリエンスに基づいた入力フォームを使用することで、生産データで強化された KPI を活用し、データ管理の向上も図ったのです。
これらのソリューションを組み合わせることで、Tyrolit 社は求めていた自動化の基盤を構築しました。例えば、SAP Sustainability Control Tower に組み込まれた生成 AI のレポート作成機能は、レポートを CSRD などの基準や社内戦略と整合させるのに役立ちました。さらに、SAP Analytics Cloud により、これらのレポートを強化することも可能になりました。また、ワークフローによって、複数のソースから ESG データを自動的に収集し、レポート作成の効率化も図りました。SAP Sustainability Footprint Management と SAP Business AI を使用したプルーフオブコンセプト (PoC) では、SAP Cloud ERP Private のデータを活用することで、排出係数のマッピングを自動化できる可能性が示され、手作業の削減と精度の向上につながることが確認されています。さらに、SAP Business AI により、ライフサイクル評価データベースにビジネスデータが自動的にマッピングされるようにし、AI を活用した協力な基盤を構築することができました。これらの機能により、統治機関、銀行、顧客、ビジネスパートナー向けに正確な ESG レポートを作成することが可能になったのです。
Tyrolit 社は、SAP MaxAttention プログラムを通じて提供された専門知識、ツール、方法論により、これらの統合された SAP ソリューションの可能性を最大限に引き出すことができました。また、同社は SAP Learning Hub, partner edition を使用して、IT ユーザーに実践的な演習を行い、最新の SAP ソフトウェアイノベーションに対応できるようにもしています。
透明性とインサイトを改善し、具体的なアクションを実行
この新しい IT アーキテクチャーにより、Tyrolit 社では 60 人を超える ESG マネージャーとユーザーが、効率化された ESG プロセスと、詳細なデータ収集に基づくレポート作成の自動化からメリットを享受できるようになりました。財務、業務、リスク評価の KPI と連携している 80 以上の ESG 指標を監視できるようになり、欧州サステナビリティ報告基準に対応することが可能になりました。また、堅牢な監査証跡、ワークフロー、承認により、ESG ガバナンスとコンプライアンスが促進され、シナリオ分析によってサステナビリティの取り組み、目標、予測が強化されました。
このような標準化された統合アプローチを採用することで、効率が向上し、正確かつ透明性の高いサステナビリティレポートの作成が可能になりました。さらに、このことがサステナビリティ管理の推進や、これまで見落とされていた改善機会の発見にもつながっていったのです。Tyrolit 社は、CSRD や EU タクソノミーなどの変化し続ける基準に対して事前に対処し、関連する事業分野で確実なアクションプランを策定できるようになりました。
例えば、データ管理を改善し、レポートを自動化することで、プラスチック梱包材の使用を削減し、包装フィルムのリサイクルを増やし、より薄い包装フィルムの代替品に切り替えることができました。グループの本社は、プロセスの最適化とガス消費量の削減により、二酸化炭素の年間排出量も削減しました。
これらのさまざまな取り組みにおいて、新しいソリューションの直感的な性質が鍵となっています。例えば、従業員の通勤行動に基づいて排出量データを集約・視覚化する使いやすいダッシュボードにより、すでに排出量削減につながるインサイトが生成されています。
Tyrolit 社は常に、人、テクノロジー、イノベーションの相乗効果を持続可能な価値創造の推進力と見なしてきました。現在では、SAP Sustainability ソリューションを活用することで、従業員主導のイノベーションを促進する基盤を構築し、未来の世代が繁栄できる世界の実現を目指しているのです。
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