
富士通ゼネラルとSAPの歩みを探る
株式会社富士通ゼネラル(以下、富士通ゼネラル)は、RISE with SAP S/4HANA Cloud Private Editionと SAP Business Technology Platform を活用し、業務の効率化、データ管理の強化、そして継続的なイノベーションと持続可能性を重視した未来を目指して、デジタル時代へと大きく踏み出しています。
| 業種 | 地域 | 企業規模 |
| 産業用機械製造 | 神奈川県・川崎市 | 従業員数:8,765名(2024年3月現在) |
アドオン機能を削減
の出力帳票を削減:2,000種から96種へ
IT統括部 統括部長, 株式会社富士通ゼネラル
モダナイズ推進のための全面的なITシステム見直し
1936年に設立された富士通ゼネラルは、空調システム業界のグローバルリーダーとして成長してきました。革新的な製品で知られる同社は、従来型のITインフラに依存していたため、重大な課題に直面していました。30年以上にわたり、富士通ゼネラルはCOBOLを使用したメインフレームシステムに頼っていましたが、そのシステムは柔軟性に欠け、IT人材の枯渇により問題が顕在化していました。さらに、既存のメインフレームには、年を昭和歴の2桁で制御している機能があり、昭和100年(2025年)になると正常に動作しなくなるリスクがありました。
断片化されたアーキテクチャに頼ることにより、営業、生産、調達、会計、人事といったビジネスプロセスの統合が妨げられ、データサイロとExcelのスプレッドシートによる手動データ集計は、非効率性と意思決定の遅れを引き起こしていました。ITインフラのモダナイズが急務であると認識した富士通ゼネラルは、従来のシステムを置き換えるだけでなく、デジタル化を通じて業務を変革する包括的なソリューションを見つけるための取り組みに乗り出したのです。
IT統括部 統括部長, 株式会社富士通ゼネラル
シームレスな統合への道
さまざまな選択肢を検討した結果、富士通ゼネラルはSAPを信頼できるパートナーとして、選択しました。この挑戦的な変革プロジェクトにSAPが選ばれたのには、いくつかの理由がありました。
まず、SAPがERP業界のリーダーとして高い評価を得ていることが大きな要因でした。さまざまな業界における複雑なビジネスプロセスをサポートする堅牢で信頼性のあるERPシステムを提供するSAPは、富士通ゼネラルにとって理想的なパートナーでした。
また、SAP S/4HANA Cloudは多様なビジネスプロセスをひとつのプラットフォームに一元化する機能を提供しています。この機能は、データサイロを解消し、組織全体でシームレスな情報の流れを実現するために不可欠です。SAP S/4HANA Cloudを選ぶことで、富士通ゼネラルは業務の全体像を把握し、より適切な意思決定を促進し、全体的な効率を向上させることができます。
SAP S/4HANA Cloudを実行系のコアシステムと位置づけ、企業内のデータ・プロセスを標準化し、変化への対応を迅速化させることを目指しました。ERP本体へのアドオンを行わないclean coreの実現に向け、SAP Business Technology Platform (SAP BTP)を介して、データ分析・活用、また、企業固有のプロセスや帳票などは、ローコード開発で内製化ができるように設計しました。
SAP BTP の機能は、データ統合、分析、アプリケーション開発のためのツールセットを提供し、シームレスな移行と運用の一貫性に必要な技術的なバックボーンを提供します。またSAP Integration Suiteにより、さまざまなデータソースとビジネスアプリケーションを接続できるため、すべての部門でリアルタイムのデータ同期が実現できます。
高度なデータ管理機能は、SAPソリューションのもう一つの重要な利点でした。従来のシステムでは、データストレージが断片化されていることが大きな問題となっていました。SAP HANA Cloudは、データを信頼できる唯一の情報源に統合し、一貫性と正確性の確保を可能にします。これは特に、富士通ゼネラルの、データの不一致が重大な問題につながる恐れがあったグローバルな業務において重要でした。SAP HANA Cloud は、SAP S/4HANA Cloudのデータを保有し、Integration Suiteと連携することで、富士通ゼネラルで保有するSAP以外のシステムへ引き渡すことでも利用しています。
IT統括部 統括部長, 株式会社富士通ゼネラル
業務の変革と従業員のエンパワーメント
SAP S/4HANA Cloud および SAP BTPの導入は、富士通ゼネラルに幅広いメリットをもたらし、運用上の課題と長期的な戦略目標の両方に対応します。
SAPのソリューションの導入の主な目的は、運用効率の向上でした。さまざまな機能をひとつのシステムに統合し、Fit-to-Standardの実装方針に従うことで、手動介入を減らし、冗長なプロセスを排除しました。クラウドERPの特性を最大限生かすために、ERP本体にアドオンをできる限り行わない(Clean Core)を実施。その結果、トランザクションの正確性が向上し、時間の節約が実現されました。実際、アドオンの50%を削減と出力帳票の90%を削減しました。また、注文処理、在庫管理、財務報告が標準機能で自動化及び最適化され、エラーが発生する可能性が減少し、全体のワークフローが迅速化されました。この効率向上と運用コストの削減により、ルーチン業務を90%から40%に圧縮し、戦略系の業務に充てる時間を6倍に増やすことが期待されています。
拡張性と柔軟性の向上は、富士通ゼネラルの成長と変化するビジネスニーズへの対応をサポートするために不可欠です。SAPのソリューションの柔軟性により、富士通ゼネラルは特定の要件に合わせてシステムをカスタマイズして構成することができ、ITインフラに制限されることなく革新と進化を続けることができます。その上、SAP BTPはS/4HANA Cloudの機能をサイド・バイ・サイドで開発するため、富士通ゼネラルはClean Coreを維持することができます。
IT統括部 統括部長, 株式会社富士通ゼネラル
継続的な革新と持続可能性の追求
SAPソリューションの導入は一度きりのプロジェクトではなく、富士通ゼネラルにとって継続的なイノベーションと成長の未来への足掛かりです。同社は、SAPの機能を活用してさらなるビジネス変革を推進し、長期的な戦略目標を達成するための包括的な計画を策定しました。
データ分析をより効果的に活用することが今後の重要な焦点です。Clean CoreとFit to Standardの徹底により、企業内のデータ・プロセスを標準化し、変化への対応を迅速化させるため、稼働後の改善、追加拡張のエンハンスを自社で取り組める内製化できる組織体制を実現しています。
SAPの強力な分析ツールを活用することで、予測分析や機械学習モデルを導入し、富士通ゼネラルはトレンドの予測、機会の特定、リスクの軽減を目指しています。これらの分析結果は、マーケティング、販売から生産、サプライチェーン管理まで、さまざまな機能における戦略的な意思決定に役立ちます。SAP Business AIは、これらの高度な機能に不可欠な役割を果たします。
継続的な改善は、富士通ゼネラルのデジタル変革への取り組みの基本原則です。この反復的なアプローチにより、システムは最先端の状態を保ち、進化するビジネスニーズに応え続けることができます。同社は、さらなる効率性と革新を推進できる新機能を探求するために、これからもSAPと緊密に連携します。
持続可能性に焦点を当て、富士通ゼネラルは環境への影響を最小限に抑え、持続可能な未来に貢献することの重要性を認識しています。SAPのシステムは、資源の最適化や廃棄物の削減を通じて、持続可能性の取り組みを支援するような役割を果たします。持続可能性を業務に統合することで、富士通ゼネラルは長期的な環境および経済的利益の実現を目指しています。
