グループ全体のデータを可視化し、サステナビリティの向上を推進
ESG データを統合し、「Road to Zero(排出量ゼロへの道)」を目指す
Mercedes-Benz 社は、EU の新しい CSRD 指令に従って正確なレポートを行うために、リアルタイムの ESG データの収集と分析を可能にする統合型のクラウドベースのソリューションを必要としていました。同社は、SAP Sustainability Control Tower を使用して、データの一元管理、レポートの統合、堅牢な KPI の開発を実現し、カーボンニュートラルな未来へとグループを導きました。
| 業種 | 地域 | 企業規模 |
| 自動車 | ドイツ、シュトゥットガルト | 従業員数:175,000 人以上 |
監査対応したワークフローで収集された EU CSRD データポイントの割合
コンプライアンスに基づいた監査可能な KPI の数
これらの KPI に含まれるデータポイントの数
Mercedes-Benz Group AG、サステナビリティパフォーマンス管理担当プロジェクトマネージャー
サステナビリティ管理のための包括的なデータプラットフォームの構築
サステナビリティは、Mercedes-Benz Group にとって最優先事項の 1 つです。Mercedes-Benz 社は、「Ambition 2039」で示されている通り、2039 年までに新車のバリューチェーン全体で実質的なカーボンニュートラルの実現を目指して、野心的かつ測定可能な目標を設定しました。同社は、持続可能なビジネス戦略の中で、環境・社会・グループのコーポレートガバナンスに不可欠な 6 つのサステナビリティ重点領域を特定しています。その 6 つの重点領域とは、脱炭素化、資源利用と循環性、人(従業員)、人権、デジタルトラスト、交通安全です。
Mercedes-Benz 社は、EU による企業サステナビリティ報告指令 (CSRD) の導入で、大きな課題に直面することになりました。同グループは、新たな欧州サステナビリティ報告基準 (ESRS) に基づくデータの収集・分析・レポートを効率的に行うため、各チームが 12 カ月以内に効果的に活用できる、一元化された拡張性の高い、データ主導のアーキテクチャーを必要としていました。また、複数の事業部門、部署、法人、拠点、システムにまたがる 50 以上のビジネス関係者に対応するため、レポートプロセスを自動化する必要もありました。
Mercedes-Benz 社のサステナビリティパフォーマンス管理プロジェクトマネージャーであるヨッヘン・ヘロルド氏が、CSRD コンプライアンスを実現するために、このプロジェクトを主導しました。ヘロルド氏は次のように説明しています。「2006 年からサステナビリティについてのレポートを作成してきましたが、この新しい規制により、要求されるデータ量が桁違いに増え、状況は一変しました。エネルギー消費量など、非常に多くの KPI について、標準化された監査可能な方法で報告しなければならず、これらを個別のエネルギー源といった多数のデータポイントにまで細分化する必要がありました」
Mercedes-Benz 社は、適切なソリューションを導入することで、CSRD コンプライアンスという喫緊の課題に対応するだけでなく、サステナビリティに関する取り組みを推進し、ステークホルダーの支持を促進し、サステナビリティがビジネスにもたらす価値を示すための基盤も構築することができたのです。
Mercedes-Benz Group AG、サステナビリティパフォーマンス管理担当プロジェクトマネージャー
強力なデータ管理と堅牢なデータモデルの活用
Mercedes-Benz 社は、複数のソリューションを評価した結果、SAP Sustainability Control Tower ソリューションを導入し、SAP Datasphere ソリューションと統合してサステナビリティデータの中央ハブを構築することを決定しました。SAP Sustainability Control Tower は、SAP Analytics Cloud ソリューションや、グループが使用しているサードパーティーの情報開示管理ツールなどのソフトウェアとの連携もスムーズです。
一方で、プロジェクトはその導入規模の大きさから、重大な課題に直面することになりました。このプロジェクトでは、約 40 カ国のさまざまな部署や事業部門からデータを集約し、一元管理するプロセスを確立しなければならなかったのです。ヘロルド氏は次のように述べています。「当社は、自動車、バン、モビリティの 3 つの異なる部門を持ち、組織体系やマスターデータの構造も大規模です」
ESRS には、該当する場合に、企業が報告しなければならない複数の KPI が含まれており、それらの数学的な計算方法や必要なデータ要素が明確に定められています。もちろん企業は、この情報をもとに独自のデータモデルを生成することも可能ですが、SAP Sustainability Control Tower にはすでにこの指令に対応したセマンティックデータモデルが組み込まれています。つまり、組織は必要なものを選択し、関連データをインポートするだけで済むのです。
また、柔軟性に優れたこのソリューションにより、Mercedes-Benz 社は、一般的な環境、社会、ガバナンス (ESG) のトピックについてより幅広くレポートすることが可能になりました。また、SaaS (Software as a Service) モデルにより、IT 保守コストも削減されます。
同社は、プルーフオブコンセプト (PoC) を成功させた後、約 1 年かけて、グローバルなサステナビリティレポートチームにこのソリューションを展開しました。SAP のビジネス変革サービスグループは、プロジェクト期間中、戦略と計画の支援、インシデントの解決、ベストプラクティスとソリューションの機能に関するアドバイスなど貴重なサポートを提供しました。
ESG レポート全体の一貫性、正確性、拡張性を向上
Mercedes-Benz 社は、SAP Sustainability Control Tower を基盤に、透明性が高く標準化された ESG レポートプロセスを構築し、初年度の CSRD レポートにおいて、報告期限を厳守することができました。初回のレポートに必要なデータのほとんどは、グループの連結システムからデータを抽出する自動ワークフローによって収集され、その結果、効率性、正確性、スピードが向上しました。
さまざまな事業部門が、直感的で分かりやすいデータ表示や、変更の記録、メール通知、リアルタイムのデータ検証、レポートプレビューなどの機能が備わったこのソリューションを高く評価しています。
ヘロルド氏は特に、このソリューションの優れたデータ管理能力に注目しています。「当社のような大規模の会社において、標準的な組織構造とセマンティックデータモデルをシンプルに組み合わせることができるのは素晴らしいことです。しかもモデルを継続的に管理しなくてよいので、時間と費用を節約できるのです」
このソリューションは SaaS であるため、コストも抑えられます。ヘロルド氏は次のように述べています。「社内で構築またはカスタマイズする必要があったものとは異なり、これは SaaS ソリューションであるため、ESG レポートの作成がはるかに効率的になりました。インフラストラクチャーとサーバーの管理作業はすべて SAP が対応してくれます」
ヘロルド氏は、SAP Sustainability Control Tower の導入によって、サステナビリティに関する定量的なデータが年次レポートに不可欠であり、同じ品質要件を満たす必要があるという認識が高まったと強調しています。「サステナビリティに関するデータも、財務データと同じ高い基準を満たす必要があるという認識が定着しつつあります。このような意識の変化は、データの品質、完全性、正確性が重要であることを示すものであり、SAP Sustainability Control Tower の導入を成功に導く上で重要な要素となっています」
コンプライアンスの枠を超えて、ビジネス価値の発見へ
初年度の CSRD レポートを終了させた Mercedes-Benz 社は、現在、SAP Sustainability Control Tower を活用して、ESG コンプライアンスの他の領域にも対応する方法を検討しています。今後は、このソリューションのさらなる機能を検討・導入し、「Road to Zero」の実現を目指します。