Kemira Oyj 社:クラウド変革によって将来を見据えたデータ重視のマインドセットを培う
SAP とともに歩む Kemira 社のジャーニー
Kemira Oyj 社は、老朽化したハードウェアを更新する差し迫った必要性を変革の機会へと変えました。同社は、Microsoft Azure 上の SAP S/4HANA への抜本的な移行、SAP Datasphere ソリューションによる次世代のレポート機能の導入、計画向け SAP Analytics Cloud ソリューションとの統合、SAP Integration Suite へのミドルウェアの移行を一気に実施しました。
| 業種 | 地域 | 企業規模 | パートナー |
| 化学 | ヘルシンキ、フィンランド | 従業員数 5,000 人 | cbs Corporate Business Solutions 社 |
業務の中断なしにクラウドに移行した工場およびプロセスの割合
SAP S/4HANA の新しいデータ構造をサポートするために統一または削除された古いマスターデータおよび組織構造の割合
Kemira Oyj 社 CIO
将来に向けてビジネスのデジタル化を飛躍的に前進
Kemira Oyj 社は、水集約型産業向けの持続可能な化学ソリューションにおける世界的なリーダー企業です。パルプ・製紙、水処理、エネルギー分野を中心に、顧客の製品品質、プロセス、リソース効率を改善する最適な製品やサービスを提供しています。Kemira 社は「目的のある化学」を信念に掲げ、顧客の化石由来原材料からの移行を促進する鍵を握っています。
サステナビリティに関する確かな実績があり、2045 年までのカーボンニュートラル達成を目指している同社は、国際連合気候変動枠組条約(パリ協定)を支持しています。効率の改善と廃棄物の最小化に向けたプロセス自動化への投資は、自社の持続可能な製造プロセスの中核を成しています。また、サプライヤーのフットプリントにも注目し、そのポートフォリオを再生可能エネルギー源に移行させています。
Kemira 社にとって、クラウドでのインテリジェントオペレーションの実行は、サステナビリティ目標の達成に役立ちます。企業全体にわたって緊密に接続されたプロセスとシステムに、高品質のデータアナリティクスとレポーティングを組み合わせることで、顧客の生産性向上、水およびエネルギー使用量の削減、化石由来原材料からの移行を促進するソリューションの開発が可能になっています。また、非常に意欲的なスケジュールに沿って、自社の製品ポートフォリオを再生可能エネルギーに転換することも可能になります。
こうしたレベルのオペレーショナルエクセレンスを達成するために、Kemira 社は大規模なデジタルトランスフォーメーションを成し遂げました。その変化の触媒は、老朽化したハードウェア環境を更新する差し迫った必要性を当然生じさせましたが、同社はこれを広範囲に及ぶ変革の機会と捉えました。
Kemira Oyj 社 CIO
コアアーキテクチャーの大規模なテクノロジー進化をオーケストレーション
Kemira 社のエグゼクティブチームは、将来に向けた即応性、イノベーション、俊敏性に重点を置き、クラウドに飛躍をもたらし、グローバルな事業運営を 1 回の移行で変革しました。これには、クラウドでの高度な ERP への全面的な移行、財務イノベーションの導入、データウェアハウスの変革、次世代のデータアナリティクス機能の導入、オンプレミスのミドルウェアインターフェースのクラウド移行が含まれていました。
このスコープには、密接に連携した 5 つのイニシアチブの並行実装が含まれていました。プロジェクトの中核となるのは、Microsoft Azure 上の SAP S/4HANA へのテクノロジー進化でした。また、高度な ERP によって提供される拡張機能とイノベーションを活用するには、財務会計の包括的な再設計が必要でした。Kemira 社は、データウェアハウジングを根本的に最新化するために、SAP Business Warehouse (SAP BW) アプリケーションを SAP Datasphere ソリューションに移行しました。また、SAP Analytics Cloud ソリューションでサードパーティーソリューションを置き換えるデジタルデータエクセレンスのイニシアチブもありました。さらに、360 以上のオンプレミスインターフェースを含むミドルウェアレイヤーを、SAP Process Orchestration ソフトウェアから SAP Integration Suite に移行する必要もありました。このステップにより、時代遅れの統合シナリオから脱却し、SAP Business Technology Platform (SAP BTP) のサービスを使用した最新の API ベースの統合を採用することができました(図を参照)。
Kemira 社のビジネスアプリケーション担当ディレクターであるミッコ・マケライネン (Mikko Mäkeläinen) 氏は、次のように振り返ります。「当社のミドルウェア統合要件の範囲は本当に厳しいものでした。従来の SAP ERP アプリケーションと残りの部門を接続していた 360 以上のオンプレミスアプリケーションインターフェースを、SAP Process Orchestration から SAP Integration Suite に移行する必要がありました。また、SAP S/4HANA による変革プロジェクトの他のマイルストーンに合わせて、このワークストリームを調整する必要がありました」
戦略的パートナーである cbs Corporate Business Solutions 社と共同で変革を指揮する Kemira 社の社内チームは、オンプレミス環境から新しいクラウドアーキテクチャーへの移行にあたって、選択的データ転送アプローチを採用することにしました。これにより、自社の既存ベストプラクティスプロセスを将来に向けて保護することができました。cbs 社の支援のもと、Kemira 社は 5 つのクラウド変革イニシアチブを一気に開始し、わずか 15 カ月で実装を完了させました。さらに、すべての工場および業務プロセスを業務の中断なしにクラウドに移行することにも成功しました。
Kemira Oyj 社ビジネスアプリケーション担当ディレクター
データ主導型かつデータ重視型のビジネスとして運営
Kemira 社は、Microsoft Azure 上の SAP ERP から SAP S/4HANA への抜本的な移行と、SAP Datasphere の導入により、新たなレベルのデータおよびレポート機能によって強化された動的で適応性の高いデジタル業務環境の土台を作りました。これを実現するために、古いマスターデータと組織構造の約半分を統一または削除しました。
計画向け SAP Analytics Cloud との統合により、詳細分析、財務計画、および将来を見据えたビジネス戦略へのリーチが広がります。これにより、月単位で半自動化され、結び付けられるボトムアップの財務計画が可能になります。これには、計画の基盤として強化されたシミュレーション機能とドライバーベースの予測が含まれ、組織全体で 1 組の数字が生成されます。また、SAP S/4HANA の利益分析などの新しい財務機能により、収益および市場セグメントを高い精度で詳細に調査し、最終予測をすべての関係者に提供することができます。
データにはいつでもリアルタイムにアクセスできるため、さまざまな局面でアナリティクスを行えるようになり、カスタマーエクスペリエンスの向上に役立つ新たなインサイトの取得や、市場の変化への対応が可能になりました。また、データ主導のビジネスモデルをクラウドで活用することで、イノベーションやサステナビリティに注力するパートナーとイニシアチブを共創する機会も生まれています。
さらに、360 以上のインターフェースをオンプレミスミドルウェアから SAP BTP に移行することで、SAP Integration Suite を使用した最新の統合シナリオを利用できるようになります。
Kemira 社のテクノロジー変革は、同社をデータ主導型かつデータ重視型の組織として次のレベルへ引き上げ、財務予測が企業全体のさまざまなステークホルダーに提供されるようになりました。「当社のテクノロジーとクラウドでのデータ変革は、戦略的資産だと考えています」とマケライネン氏は語ります。「当社には、いずれもリアルタイムデータに基づいて実行されるすべてのデータソース、企業レベルの計画、損益、その他の財務計画プロセスに対する統合レイヤーがあります。計画ソリューションを稼動開始した翌日には、予算編成に使用したほか、リアルタイムの分析とレポートも活用しました。これは、手作業でのレポート作成やスプレッドシートからのデータの取得と比べて革新的です」
また、Kemira 社は SAP SuccessFactors ソリューションを SAP Datasphere および SAP Analytics Cloud と統合して、人事レポートと戦略的要員計画も実現しました。要員データをリアルタイムで利用できるようにすることで、継続的なパフォーマンスの文化が醸成されます。
また、環境・安全・衛生データの調和により、サステナビリティと将来のサステナビリティレポートに向けた戦略的ステップを達成しました。
さらに、合併・買収レベルでは、最新の ERP システムの柔軟性により、テストや移行のために分割したコピーや新しいシステムをすばやく作成することで、短期間で事業を売却することがすでに可能になっています。
Kemira Oyj 社 CIO
持続可能な化学ソリューションでリード
Kemira 社は、新しいテクノロジー基盤により、サステナビリティの向上、AI によるイノベーション、より適切な価格設定のための財務ポジションの分析など、領域を問わず、革新性、俊敏性、将来性を実現しています。
すでに、SAP Datasphere と SAP Analytics Cloud の活用を他のプロセス領域にも広げており、ビジネスユーザーはデータモデルを拡張したり、独自のダッシュボードを設計したり、個別のクエリーを作成したりすることができます。これは、データからより多くの価値を引き出してビジネスの舵取りをするのに役立っています。同社は、SAP Datasphere で財務レポート全体を運用した最初の 10 億ドル規模の企業の 1 つであることに非常に誇りを持っています。
Kemira 社のコアアーキテクチャー変革と次世代データアナリティクスおよびレポート機能の導入の興味深い副次的影響として、優秀な人材の獲得と維持に与える影響があります。ポドベレズニイ氏は次のように説明します。「SAP S/4HANA の最新化と SAP Datasphere の導入が、非常に効果的だったことが明らかになりつつあります。当社と連携してこれらのツールを大規模に利用する機会を望む、優秀な候補者からの関心が急増しています。これは、社内の従業員にとっても、これらのツールを使用して持続可能な化学ソリューションの最前線に立つまたとない機会です」
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主要パートナー
cbs Corporate Business Solutions 社は、信頼できるパートナーとして Kemira 社のデジタルトランスフォーメーションの成功に貢献しました。同社は、統合ビジネスプロセスソリューションと革新的なテクノロジーに加え、戦略、アーキテクチャー、プロセス設計に関するコンサルティングを組み合わせた独自の変革サービスを提供しています。cbs 社のチームは、Kemira 社のレガシー SAP ランドスケープからクラウドへの移行を高い精度で調整し、重要なコンポーネントを維持しながら、新しい機能を最大限に活用できるように支援しました。