データアーキテクチャーの概要
データアーキテクチャーは、生データとビジネスニーズ間の架け橋です。雑然とした食品庫を思い浮かべてください。豆の缶詰や粉類の袋を無秩序に放り込んでいたら、夕食を作るために必要な材料を見つけるのに、とんでもなく苦労することでしょう。データ主導型の組織にも同じことが言えます。データが体系化されず、重複したり、分断されていると、企業固有のニーズをタイムリーに満たすことができません。
データアーキテクチャーの構成と仕組み
組織全体で一貫性のある操作をするための標準データ環境を構築することで、データアーキテクチャーは機能します。それには、効果的なデータ管理を容易にし、時間の経過につれて進化する多面的アプローチが必要です。一般的に、次のような方法があります。
- データモデルの活用:データモデルは、データの構造と関係を表します。
- ストレージソリューションの使用:ストレージソリューションは、データを整理してアクセス可能にするためのもう 1 つの方法です。
- セキュリティ対策の実施:セキュリティ対策により、データの侵害、攻撃、または破損を防ぐことができます。
- データガバナンスの実現:データガバナンスプラクティスにより、データの法規制準拠を徹底します。
これらの要素を組み合わせることで、効果的なデータ管理を促進し、戦略的な意思決定や業務効率の向上を支援します。
堅牢なデータアーキテクチャーは、具体的ビジネスニーズに対応するために十分な柔軟性を備えている必要があります。AI やモノのインターネット (IoT) 機能などの新しいテクノロジーによって新しいデータソースが急増する中、データアーキテクチャによってデータの活用、体系化、検索が容易になります。
適切に実装されたデータアーキテクチャーは、企業に次のようなメリットをもたらします。
- データストレージの重複の削減
- データ品質の向上
- データのクレンジングと調和の機会の増大
- 統合機会の創出
- データサイロの削減
データアーキテクチャーの種類と主要な構成要素
データアーキテクチャーは、異なるデータ管理システム間の相互作用に関する概略レベルビューを示します。データレイクアーキテクチャー、データウェアハウスアーキテクチャー、その他のデータモデルなどのより小規模なデータストレージリポジトリにより、データファブリックやデータメッシュアーキテクチャーなどの各種データアーキテクチャーの分析機能が強化されます。
データモデルの種類
データモデルには、次の 3 つの種類があります。
- 概念データモデル
概念データモデル(ドメインモデルとも呼ばれる)は、データシステムの内容、体系化の方法、適用されているデータルールの種類など、アーキテクチャーの全体像を示します。
- 論理データモデル
論理データモデルは、概念データモデルほど抽象的ではありません。データ要素、相互作用の仕方、ビジネスの様々な側面との関係性の詳細ビューを示します。
- 物理データモデル
物理データモデルは、最も詳細なモデルです。インデックス、テーブル、ストレージ、パフォーマンス仕様などデータベース実装の詳細を示します。組織によるデータのセキュリティ、保存、アクセス方法の全体像を詳細に記述します。
データアーキテクチャーとデータモデル
データアーキテクチャーとデータモデルの最大の違いは規模です。データモデルはデータアーキテクチャーの一部として、そこに含まれるデータオブジェクトとそれらの間の関係性を示します。データアーキテクチャーは戦略的なフレームワークであり、データモデルはこのフレームワークを実装するための戦術的なツールを提供します。
データアーキテクチャーの種類
- データレイクアーキテクチャー
データレイクアーキテクチャー (略してデータレイク) には、あらゆる規模の構造化データ、半構造化データ、非構造化データを保存できるため、データサイエンティストやデータエンジニアにとって非常に便利です。データレイクでは、クラウドベースおよびオンプレミスのデータを、ネイティブフォーマットで迅速かつ安全に収集できます。最新の機械学習アプリケーション、AI 機能、概念実証、データのバックアップおよび復元に使用されます。
- データウェアハウスアーキテクチャー
データウェアハウスアーキテクチャー (略してデータウェアハウス) は、企業全体からデータを収集する、大規模なストレージリポジトリです。異種混在のデータを一元化された場所に保存します。主に、データ管理の意思決定に対する指針を示したり、ビジネスプロセスを支援したりするために使用されます。
- データマートアーキテクチャー
データマートアーキテクチャー (略してデータマート) は、データウェアハウスのより小規模で焦点を絞ったバージョンです。通常、組織内の個々のチーム、ユーザー、グループ (営業部門など) にとって重要なデータのサブセットが含まれます。これらマートの専用データにより、特定のチームまたはユーザーは、データウェアハウスよりも迅速に焦点を絞ったインサイトを抽出することができます。データマートのデータは、データレイクやデータウェアハウスよりもはるかに詳細です。
- データファブリックアーキテクチャー
データファブリックは、専用のソフトウェアソリューションとデータアーキテクチャーを組み合わせることで、さまざまなシステムやアプリケーション間でデータを接続、管理、統制します。データファブリックを使用すれば、組織はデータに関するインサイトを収集して、サイロの解消とデータ更新対策の改善に適用することができます。データファブリックアーキテクチャでは、データレイクアーキテクチャ、データウェアハウスアーキテクチャ、その他のアプリケーションなどのさまざまなソースのデータを使用して、組織のデータ使用方法の詳細を示します。データファブリックが特に便利なのは、データがどこに存在していようが、頻繁に抽出/再構築することなくすべてにアクセスできることです。しかも、ビジネスコンテキストやビジネスロジックはそのまま維持できます。データストレージシステムとは異なり、データファブリックは複雑なデータアーキテクチャー内のすべてのデータを効率的に処理できます。データを保護、クレンジング、拡充、統合することで、分析、機械学習、AIなどのアプリケーションにすぐに適用できるようになるからです。
- データメッシュアーキテクチャー
データメッシュアーキテクチャー (略してデータメッシュ) は、分散化された場所にあるドメインごとにデータを体系化します。データをドメイン別(マーケティング、販売、人事など)に分類することで、企業内のデータ所有者は独自にデータ主導の意思決定を行い、ビジネス上の意思決定に役立つインサイトを得ることができます。データメッシュは、データレイクやデータウェアハウスなど他の分散化されたソースからデータを収集し、これをデータファブリックに織り上げることで、詳細なデータインサイトを提供し、ビジネスの俊敏性を強化します。
データアーキテクチャーのコンポーネント
キッチンの整理収納と同じように、データアーキテクチャーには複数のコンポーネントがあります。整理収納するには、単に容器に入れるだけではなく、整頓するための思考プロセスと細やかな配慮が必要になります。データアーキテクチャーの各側面は、アーキテクチャーのスムーズな運用を実現するためにそれぞれ異なる役割を果たし、固有のメリットを提供します。データアーキテクチャーには、主に次のようなコンポーネントがあります。
- データモデル:データモデルは、データオブジェクトとその関係を極めて詳細かつ抽象的に表現したものです。データの体系と構造のレイアウトを示し、組織のデータシステムの中でデータフローと依存関係がどう機能するかを記述します。データモデルは、データの整合性と一貫性を保証するので、データベースの設計に特に役立ちます。
- データ統合:データ統合チャネルは、異種混在のソースからのデータをつなぎ、一元化されたビューに統合します。一般的なデータ統合プロセスとして、ETL (抽出/変換/ロード) 操作、データ同期、データ移行などがあります。効果的な統合は、分断されているサイロ内のデータをつなぐことで、一貫性のあるデータ環境を構築し、包括的な分析やレポート生成を実現します。
- データストレージ:データストレージには、データベース、データウェアハウスアーキテクチャー、およびデータレイクアーキテクチャーが含まれます。データストレージソリューションは、スケーラビリティ、セキュリティ、信頼性が強化されており、現在と将来のデータに対するニーズに応えることができます。適切なストレージアーキテクチャーがあればデータの取得と管理が改善され、必要なときに正確な情報にすばやくアクセスできるようになります。
- データセキュリティ:データセキュリティ対策は、不正なアクセス、侵害、破損からデータを保護するために組織が講じる予防策です。一般的なデータセキュリティ対策として、暗号化、アクセス管理、定期的監査などがあります。データセキュリティの確立は、機密情報を潜在的脅威から守り、データの完全性と規制要件への準拠を維持するために不可欠です。
- データガバナンス:データガバナンスには、データ資産を管理するための標準のポリシーや手順が含まれます。データの品質を保証し、法規制準拠を徹底させます。データガバナンスのフレームワークは、役割と責任、データ標準、説明責任を果たすための対策を定義し、データの効果的かつ倫理的な使用を組織全体で促進します。
データアーキテクチャーの基本原則
データアーキテクチャーの原則は、組織全体でデータを効果的に管理するための、中核となるガイドラインやベストプラクティスを確立します。これら原則は、現在と将来両方のビジネスニーズに応えられる、堅牢でスケーラブルなデータ環境を構築するための基盤を提供します。
- 一貫性:適切な構造のデータアーキテクチャーを導入すれば、組織全体でデータが均一化および標準化されます。これには、統合や分析を容易にするための、データの定義やフォーマットの標準化も含まれます。
- スケーラビリティ:データアーキテクチャーは成長を促進します。そのため、データ量の増大やデータリソースの追加を念頭に置いています。増大するデータや、高速で柔軟な分析ソフトウェア向けに十分なスペースを確保するなど、変化に備えた対策を実施することで、組織はデータアーキテクチャをそのまま維持することができます。
- セキュリティ:不正アクセス、攻撃、侵害からデータアーキテクチャーを守るには、セキュリティ対策が欠かせません。ウイルスや ID 盗難を防ぐために携帯電話やコンピューターで使用しているような、一般的セキュリティ対策を講じることで、組織ではデータの安全性とプライバシー保護を守ることができます。
- 柔軟性:データアーキテクチャーは本質的に適応性が高く、変化するテクノロジーやビジネス要件に即座に対応できます。AI 機能などの新しいソフトウェア、または新しい電子メールシステムを追加するのに多くの時間や再調整の手間がかかることはもうありません。データアーキテクチャーを使用すれば、最小限の手間ですぐに新しいツールを使用できます。
- 可用性:データアーキテクチャーを使用すれば、誰もが必要なデータにいつでも必要なタイミングでアクセスできます。組織は、売上データや収益などの重要情報へのアクセスを制限することなく、特定の職位にあるすべてのユーザーにデータを開放できます。これによって、タイムリーで効果的な意思決定が可能になります。
データアーキテクチャーの導入のメリット
適切に実装されたデータアーキテクチャーは、企業に以下をはじめとする様々なメリットをもたらします。
- データライフサイクル管理の強化:最新のデータアーキテクチャーは、データ管理能力を長期にわたって強化します。データはすぐに古くなるため、流動的なデータアーキテクチャーがあれば、それらの古いデータをより低速、低コストのストレージエリアに移動できます。データアーキテクチャーの活用により、高コストのデータストレージを増設しなくとも、監査に必要なデータに簡単にアクセスできます。
- データ品質の向上:データアーキテクチャーは、組織全体のデータガバナンスおよびセキュリティ標準の基盤として機能します。高品質のデータアーキテクチャーにデータを保存することで、必要なデータがすぐに見つかり、ビジネス上の意思決定の根拠となる適切なインサイトを引き出すことができます。
- データ重複の削減:企業内の様々な部門に、重複したデータが保存されている場合があります。データ重複は不正確なデータが使用されるリスクにつながり、データ統合の制約になる場合があります。適切な構造のデータアーキテクチャーは、データストレージを標準化してリスクの高いデータ重複を削減すると共に、データ分析プロセスを強化します。
- データサイロの最小化:データストレージゾーンが分散すると、しばしばデータサイロが生まれ、組織が能力を最大限発揮するのを妨げる場合があります。データアーキテクチャーでは、ドメイン間でデータが柔軟に統合されるため、企業内の様々な部門が相互のデータにアクセスでき、より効果的なコミュニケーションが可能になります。データ統合により、経費や収益などの重要なデータポイントの詳細が明らかになり、意思決定が改善されるとともに、唯一の正確な情報源が維持されます。
最も一般的なデータアーキテクチャーフレームワークとは
データアーキテクチャーのフレームワークは、IT インフラストラクチャーの基盤であり、データ主導型のビジネス戦略を支えるうえで不可欠です。組織内のデータアーキテクチャー導入をガイドするために、いくつかのフレームワークが幅広く採用されています。最も一般的なフレームワークとして、次のようなものがあります。
- Zachman Framework:データアーキテクチャに対するこの構造化されたアプローチでは、視点ごとに異なる抽象化の概要を提供することで、エンタープライズデータとプロセスが体系化されます。このフレームワークは、上位のコンテキスト情報から下位の具体的な詳細運用情報に至る、あらゆる種類の情報をカバーします。共通の言語と方法論を提供することでステークホルダー間のコミュニケーションを促進し、IT システムとビジネス目標の間の整合性を高めます。
- TOGAF (The Open Group Architecture Framework): TOGAF は、データアーキテクチャを設計、計画、実装、および制御するための上位レベルの方法論です。IT インフラストラクチャーをビジネス目標に整合させ、一貫性のあるデータ環境を構築することに重点が置かれています。これによって、ガイド付きの構造化されたデータ管理が可能となり、組織の戦略的目標達成を後押しします。
- DAMA-DMBOK (Data Management Body of Knowledge):このフレームワークは、データ管理の包括的なガイドラインとベストプラクティスを提供します。データガバナンス、データ品質、データ統合など、データアーキテクチャーの様々な側面に対応することで、データの専門家が必要とする有益な基準を提供します。DAMA-DMBOK フレームワークはデータ管理の原則とプラクティスを特に重視し、そのために組織全体で一貫した高品質のデータを実現します。
データアーキテクチャーと今後の傾向
データアーキテクチャーが新しいデータトレンドと最新テクノロジーをサポートするので、組織は最新テクノロジーを先駆的に利用し、競争優位性を獲得することができます。データーアキテクチャーによって加速されそうなトレンドとして、次のようなものが考えられます。
- AI および機械学習による分析:AI と機械学習テクノロジーは、強力な予測分析、自動化、高度なデータ処理によってデータランドスケープに革命をもたらしています。これらテクノロジーは、パターン識別、予測、定型業務の自動化によって、データアーキテクチャーを強化します。これらすべてにより、インテリジェントなデータ管理システムがより効果的になります。
- エッジコンピューティング:エッジコンピューティングは、中央集中型のデータセンターに頼らず、よりユーザーに近い場所でデータを処理します。これがデータアーキテクチャに統合されると、全体的な待ち時間が短縮され、リアルタイムのデータ処理機能が向上します。IoT デバイスやリアルタイムの分析ソフトウェアなど、即時のインサイトが必要となるアプリケーションに不可欠です。
- ブロックチェーン:ブロックチェーンテクノロジーは、分散型元帳システムを構築し、データのセキュリティと完全性を飛躍的に向上します。取引を記録する透明性の高い方法を提供することで、データアーキテクチャーの信用と信頼性を大幅に高めます。
- データおよびアナリティクスソリューション:データアーキテクチャーは、データおよびアナリティクスソリューションのパフォーマンスを強化します。これとオープンデータエコシステムのメリットの相乗効果により、安定したデータアーキテクチャーを備えた組織では、刻々と変化する市場の中でビジネス上の意思決定を俊敏に行う準備が整います。
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