ワークフロー管理とは?
「ワークフロー管理」というビジネス用語は、電子メール、デスクトップコンピューター、デジタル業務システムが登場し始めた 1980 年代に生まれましたが、この新しいテクノロジーが、エラーの削減と反復タスクの効率化にいかに役立つかということに、人々はすぐに気づきました。今日、私たちはクラウドに接続されたスマートソフトウェアとデジタル化されたワークフロー管理システムに支えられ、効率と俊敏性の向上、サイクル時間の短縮とエラー発生率の削減、コンプライアンスの強化を実現しています。
ワークフローとは、特定の結果を得るために行う一連のアクティビティまたはタスクであると定義できます。構造化されたワークフローは、個別のパスに従います。このパスは、特定の依存関係や要件に合わせて順次または並列で処理される場合があります。多くの場合、パスには、期待されるビジネス成果に応じて定義済みバリエーションが存在します。
ワークフローには、以下の 3 つの種類があります。
完全手動:手動ワークフローでは、例えば、オフィスや製造現場で、紙ベースの受領書や手書きメモ、署名が物理的に次のセクションに渡されます。
半自動:部分的に自動化されたワークフローでは、プロセスの一部が自動化されます。例えばメールで、ファイルの添付、メール本文へのコメント追加、添付ファイルの変更が行われて、現行処理者の都合が良いときに送信されるなどします。
完全デジタル化または自動化:自動化されたワークフローは、定義されたビジネスルールに従って、体系的に定義された方法で専用のビジネスアプリケーションにより実行されます。
ワークフロー管理の重要性
ワークフロー管理は、個別のプロセスをデジタル化し、その結果を管理するプロセスです。ワークフロー管理システムでは、ワークフローの構築、実行、管理が可能です。専用ソフトウェアソリューションの利用から得られる主なメリットと成果をいくつか紹介します。
効率の向上:自動化率を高めて、より迅速で優れた成果をもたらすと同時に、ステークホルダーの活動を円滑にします。例えば、完全に自動化されたワークフローを使用すると、ビジネスステークホルダーは、オフィス、自宅、外出先など、どこで仕事をしていても、明確に定義されたデジタルタスクに簡単にアクセスして、レビューし、処理することができます。
俊敏性の向上:変化する業務ニーズに合わせて標準ワークフローを調整したり、新しいビジネスモデルをサポートするプロセスイノベーションを創出したりするほか、破綻したプロセスを修正してビジネスの回復力と俊敏性を高めます。
コンプライアンスの強化:責任を明確化するとともにデータに基づく監査証跡を利用して、プロセスの結果の監視と管理を行い、ポリシーと法規制に関するコンプライアンスを強化することができます。
ワークフロー管理とビジネスプロセス管理の違いとは?
ワークフローは、より具体的で独立した一連のステップやタスクです。一方、ビジネスプロセスは、タスク、ワークフロー、アクティビティ、ガイドラインの集合に対する幅広い用語であり、自動化されるタスクもあれば、自動化されないアクティビティもあります。
例えば、購買管理のシンプルな承認ワークフローを考えてみましょう。そこでは、1 つまたは複数のバリアントが定義され、購買金額が一定の額を超えた場合は購買発注に別の部門からの承認が必要であるというビジネスルールが取り決められています。このワークフローは、組織内で商品やサービスを購入する方法に関する、より大きなビジネスプロセスの一部です。ベンダー選定や調達・購買などのガイドラインが含まれる場合もあります。
一般的なワークフローの例は以下のとおりです。
購買発注の承認
休暇申請の承認
請求書支払の処理
従業員の採用
交換部品の依頼
顧客への請求書の送信
ワークフロー管理システムとその仕組み
ワークフロー管理システムでは、さまざまな種類の業務やプロセスに対して異なるワークフローを定義することができます。例えば、製造業務向けの場合、設計文書が設計者からテクニカルディレクターに、最後には生産エンジニアに自動的にルーティングされるように設定できます。ワークフローの各段階で、1 人の個人または 1 つのグループが特定のタスクを担当します。そのタスクが完了すると、ワークフロー管理システムによって次のタスクの担当者に通知が送信され、その担当者はタスクの実行に必要なデータを受け取ります。
ワークフローには、より複雑な依存関係を含めることもできます。例えば、文書を複数の言語に翻訳する場合、翻訳部門マネージャーが翻訳対象の言語を選択すると、各選択がそれぞれの翻訳者に対する作業指示書として有効化されます。すべての翻訳者がそれぞれのタスクを完了した場合にのみ、プロセスの次のタスクが有効化されます。これによって、作業の滞りを確認したり、より大規模なチームが目標に沿って作業したりできるようになります。
このワークフロー管理ソフトウェアでは、プロセスの管理とプロセス内のバリエーション定義を行うことができます。
ワークフロー管理システムの使用例
すべての企業が独自のニーズを抱えています。以下、最新のワークフロー管理システムを導入する事例をいくつか紹介します。
既存のビジネスアプリケーションの最適化:多くのエンタープライズアプリケーションには、システムではまだ対応していないビジネスプロセスを定義して構築するための組み込みツールとワークフローテンプレートが用意されています。ワークフローに変更が必要な場合、管理者は一から始める必要はありません。システムの既存の機能を活用してワークフローを変更することができます。また、優れた最新ソフトウェアツールであれば、人工知能 (AI) とプロセスオートメーションツールが組み込まれた自動化機能が付属しています。
side-by-side アプリケーション拡張:多くの企業は、「clean core」の維持、つまり、ソフトウェアアプリケーションの実行にあたり、修正をできるだけ少なくしたいと考えています。このため、新しいワークフローやプロセスイノベーションは、既存システムのデータを活用しながら、既存ビジネスアプリケーションの外部に構築されます。このような「side-by-side」と呼ばれるアプリケーション拡張は、「in-app」拡張とは対照的に、クラウドで構築され、実行されるのが一般的です。
部門間のプロセスオーケストレーション:クラウドベースのワークフロー管理システムも、業務部門間オーケストレーションにおいて好まれるオプションです。このようなオーケストレーションは、さまざまなアプリケーション、システム、サービス全体をカバーするビジネスプロセスです。例えば、ハイブリッドランドスケープでは、自動化要件に沿って、異なるアプリケーションや地域で実行される分断された複数のワークフローを接続する必要があります。また、特定のワークフローをパートナーやサプライヤーなどの外部プロセス参加者に提供し、このワークフローの結果を使用して、社内で次のステップを開始するプロセスなどと併用することもできます。
分野別エキスパートによるワークフロー調整の簡素化:シンプルな申請や承認のフォームのみを利用する部門専用プロセスであれば、ローコード/ノーコード (LCNC) 開発プラットフォームで自動ビジネスプロセスを作成できる場合があります。つまり、ビジネスユーザーは、ドラッグ&ドロップ機能と視覚的に簡単な機能を利用して、チーム固有のニーズに合った軽量のワークフローアプリを迅速に構築することができます。
ワークフロー管理テクノロジー
ワークフローテクノロジーにより、明確な目的を持つ標準化されたプロセスを作成し、定義済みのパス内でさまざまなタスクをつなげることができます。1 つまたは複数の新しい自動化テクノロジーとのインテリジェントな組み合わせにより、プロセスフロー内でより高いレベルの自動化が実現され、より良いプロセスの成果が迅速にもたらされます。さらに、革新的で新しいプロセスを作成して、価値の創出やエクスペリエンスの向上に役立てることができます。最新のワークフローソフトウェアで使用されている高度なテクノロジーの例をいくつか紹介します。
ビッグデータ:ビッグデータテクノロジーと、ビッグデータに対する可視性の向上により、大量の情報を利用できるようになりました。これらの情報をビジネスプロセスに統合して直接使用できます。例えば、ワークフローの一例として、次のような半自動化された設備投資 (CAPEX) 承認プロセスを見てみましょう。投資判断の前に、関連するレビュー担当者と承認者の間で、財務レポートがメールでやり取りされます。ワークフローシステムにより、関連するデータソースを使って必要なレポートが自動的に生成され、プロセス内の定義された特定ポイントで適切なユーザーにそのレポートが自動的に送信されます。さらに、定義されたビジネスルールに基づいて、または人工知能 (AI) と機械学習機能(下記参照)に基づいて、統合データが意思決定を支援し、プロセスを迅速化し、意思決定者をルーチン業務から解放します。
AI:機械学習、自然言語処理 (NLP)、コンピュータービジョン、ロボティックプロセスオートメーション (RPA) などの AI テクノロジーは、以前は人間が手作業や半自動化の方法でしか実行できなかったプロセスステップの自動化に役立ちます。
機械学習:パターンを検出したり、予測や提案を行ったりするために、複雑なデータ分析を必要とするプロセスのステップに機械学習を適用できます。ソフトドリンクの補充オーダーが天気予報に大きく依存する可能性があるスポーツイベントでのケータリング業者など、その好例と言えます。
自然言語処理 (NLP):NLP に基づくチャットボットやデジタル音声アシスタントは、プロセス内の特定の対話を自動化したり、単純なワークフローを完全に自動化したりすることができます。大量の定型的な問い合わせ(購買発注や請求書の状況など)に対する自動応答に有効です。
コンピュータービジョン:コンピュータービジョンでは、画像から複雑なコンテキスト情報を抽出し、これをほかのプロセスの自動化や通知に使用することができます。例えば、電力供給網の事業者は、衛星画像の分析を通じて地表面変動の監視を行い、保全プロセスを通知したり、インフラに支障をきたす事象が発生した場合にサービス要員に自動で通知したりします。また、予測保全スケジュールも作成できます。外観検査を自動化して、固定のタイムテーブルによらず必要に応じてサービスを依頼します。
ロボティックプロセスオートメーション (RPA):RPA は、ユーザーとシステムとのインタラクションを模倣して、プロセスフロー内で反復される手作業を実行します。一般的なユースケースとして、スプレッドシートやその他の文書(サプライヤーからのメールなど)からビジネスシステムにデータをコピー&ペーストして、統合ギャップを埋めることが挙げられます。これにより、タスクが高速化するだけでなく、データの精度も向上します。
販売プロセスのステータスと主要な指標を示すワークフロー管理ソフトウェア。
ビジネスワークフロー管理と自動化のトレンド
ハイパーオートメーションとインテリジェントな自動化
これらは最近よく耳にするようになった用語です。実際、Gartner の最近の調査によると、経営幹部の 85% 以上が「今後 12 カ月間に自社のハイパーオートメーションへの投資額を維持または増加する予定」で、56% 以上が「すでに 4 つ以上のハイパーオートメーションに関する取り組みを同時に進めている」と回答しています。
最新のワークフロー管理ソリューションと自動化ソリューションは、上記のテクノロジーの大半またはすべてを 1 つのソリューションに統合することで、このトレンドに対応しています。このアプローチによって、さまざまなベンダーによる異種混在のテクノロジーから生じる課題を回避できるだけでなく、自動化にともなう作業を大幅にシンプルにできます。このようなソリューションを使用すれば、必要に応じていつでも 1 つのプロジェクト内からすべての機能にアクセスできるようになるため、さまざまな開発ツールを使ったり、そのために学習したりする必要がなくなります。
ローコード/ノーコード (LCNC) による自動化
これは、ワークフロー管理のランドスケープに影響を与えているもう一つのトレンドです。市民開発者とは、複雑なソフトウェアシステムを使いこなし、テクノロジーに精通しているものの、プログラミングやコーディングのスキルをほとんどあるいは全く持たないユーザーを指します。ローコード/ノーコードソリューションでは、視覚的な操作やドラッグ&ドロップが可能な事前構築済みのコンテンツを活用できるため、市民開発者に革新的な変化をもたらします。LCNC を利用すれば、コードを記述できなくても、特定分野における幅広い専門知識に基づいて、ワークフローやプロセスを作成し、状況に応じて調整できます。
また LCNC は、プロの開発者にも大きな価値をもたらします。同じドラッグ&ドロップの簡単な操作で、標準タスクをこれまでよりも大幅に速く完了することができます。プロフェッショナル向けの LCNC アプリケーションツールを使えば、開発者はより複雑なワークフローを作成して自動化を実施し、このようにカスタマイズされたすぐに利用可能なコンテンツを短時間で提供できるようになります。
