調達とは?

調達とは、ビジネス運営に必要なあらゆる商品やサービス(原材料、ソフトウェア、事務用品など)の調達先選定、購入、受け取り、検品までを含むプロセスです。

調達とは、ビジネス運営に必要なあらゆる商品やサービス(原材料、ソフトウェア、事務用品など)の調達先選定、購入、受け取り、検品までを含むプロセスです。

 

調達部門は、普段は目立たない存在ですが、企業活動を円滑に進めるために、必要な時に必要な資材やサービスを確実に確保する重要な役割を担っています。そのため、これまでは運用面が中心で、戦略的な分野とはあまり見なされてきませんでした。

 

しかし、インフレや供給コストの上昇を背景に、コスト抑制は引き続き最優先事項となっています。とはいえ、コスト管理は現在の調達部門が直面する課題の一部に過ぎません。調達部門は、物資不足のリスクと余剰在庫によるコストの板挟みになりつつ、異常気象や予期せぬトラブルによる配送遅延が発生しても、サプライチェーンのレジリエンス を維持しなければなりません。また、企業は持続可能な商品調達や拡大する規制への対応が求められるため、データ収集や精査など、調達プロセスの管理も一層重要になっています。地政学的なリスクや資材不足が生じれば、調達部門は一気に経営課題の最前線に立たされることになります。

最高調達責任者(CPO)の役割も、単なるコスト削減やコンプライアンス重視のバックオフィス機能から、より戦略的な位置付けへと変化しています。

調達の定義

調達は、組織が必要とするあらゆる物資やサービスを確実に確保する、極めて重要なビジネス機能です。特に製造業では、必要な資材がなければ製品を作ることができないため、供給の安定性が非常に重要となります。調達部門は、社内の関係者と連携し、需要予測や要件を収集した上で、最適なサプライヤーから最適なコストで調達する役割を担っています。

供給や輸送に関する詳細が記録されたパピルスの巻物が残っていることから、調達の機能はピラミッド建設時代まで遡ることができます。調達は、時代を経るごとに大きく変化し、単なる記録管理から、戦略的な思考や交渉力が求められる分野へと発展してきました。

 

産業革命期には、製造業の急速な発展に伴い、資材の調達・購買・輸送の重要性が増しました。経済が活況を呈した20世紀半ばには、機会の増加や競争入札の導入により、調達業務が再定義されました。この時期、人々はサプライチェーン管理のさまざまな側面を学び、専門家としての地位を確立しました。調達は、単なる事務作業ではなく、管理機能として認識されるようになったのです。

 

そして現在、調達は過去の変革に匹敵するほどの大きな変化を再び迎えつつあります。

調達がビジネスで非常に重要な理由

これまでバックオフィスの管理機能だった調達部門は、今や企業経営において中心的な役割を果たし、経営幹部レベルの複雑な戦略的意思決定における重要なパートナーとなっています。

さらに、調達部門は企業コストの大部分(ある試算では40%〜80%)を管理しているため、予算検討の際に欠かせない存在です。効果的な調達はリスク評価やサプライヤー管理を強化し、サプライチェーン全体での価値創出にもつながります。

 

ビジネスで調達が重要視される主な理由は次の通りです。

  • コスト削減:調達はコスト削減とキャッシュフローの安定化において最前線の役割を担い、利益率や最終的な損益に直接影響します。競争力のある製品調達や契約交渉によって大幅なコスト削減が可能です。また、購買プロセスの効率化は決算にも大きく貢献します。

  • 品質:適切な原材料を適切なタイミングで調達することは、高品質な製品づくりに不可欠です。資材やサプライヤーの選定は製品・サービスの品質に直結するため、調達プロセス全体で品質を重視することが重要です。品質へのこだわりは、企業の評判や生産性、法的リスクの軽減にもつながります。

  • 目標の整合:戦略的調達では、購買活動を企業の目標に合わせます。例えば、俊敏性やレジリエンスの強化が企業の中核的価値であれば、それに必要なツールや仕組みを調達プロセスに取り入れる必要があります。市場や社内要件の詳細な分析は、最適なサプライヤー選定に役立ちます。

  • リスクの軽減:ニーズ分析の誤りやサプライヤーの納品遅延など、調達プロセスにはさまざまなリスクが潜んでいます。さらに、コンプライアンス対応の不備、不明瞭な倫理基準、天候リスクやグローバルな混乱などもリスク要因です。現代のテクノロジーを活用した調達は、これらのリスクを事前に把握・評価し、最小化するための可視性を提供します。

  • サステナビリティと倫理:調達部門は、企業価値観に沿った環境配慮や倫理的調達、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを推進し、コンプライアンスの確保やリスク、風評リスク、無駄なコストから企業を守る役割も担います。持続可能な調達とコンプライアンス管理は、調達部門の重要な責任です。

調達管理の種類

調達には、主に 4 つのタイプがあります。

  1. 直接材調達これは、原材料、コンポーネント、部品、サービス、卸売品など、企業が販売する製品の生産を直接支えるあらゆるものの調達を指します。これらは収益、成長、評判に大きく関わるため、直接材調達ではサプライヤーとの関係が非常に重要です。
  2. 間接材調達生産に直接関係しない、社内利用や日常業務に必要な資材・物品・サービスの調達が間接材調達です。これには事務用品、光熱費、旅費などが含まれます。
  3. 物品調達:直接材調達・間接材調達のいずれも、物品調達に含まれる場合があります。これは、完成品・未完成品を問わず、機器や原材料、オフィスチェアなどあらゆる有形物の調達を指します。
  4. サービス調達コンサルタント、代理店、法律事務所、ITやセキュリティのアウトソーシング、SaaS(Software as a Service)の提供、設備修理など、人材を基盤とした専門サービスはすべてサービス調達に含まれます。これらは効率的なワークフローや人員不足の補完に役立ちます。

調達プロセスを構成する 12 のステップ

調達プロセスは会社ごとに異なる場合がありますが、一般的には次の12のステップで構成されています。

 

1. ニーズの特定:調達プロセスの最初のステップは、不足、新規プロジェクト、または日常業務の要件に応じて必要な資材、製品、ソフトウェア、サービスを明確にすることです。この段階には需要計画と予測が含まれます。

 

2. サプライヤーの選定:ビジネスニーズに合ったサプライヤーを調査・評価する作業は、調達プロセスの初期に行われます。代替サプライヤーを確保しておくことで、不足や混乱時に選択肢が増え、リスク管理がしやすくなります。

 

3. 購買申請の提出: 価格、納期、数量などの詳細を記載した購入申請書を内部で審査・承認に提出することで、購買プロセスが始まります。

 

4. サプライヤーの評価と選定:提案依頼書(RFP)、見積依頼書(RFQ)、eオークション、または「1案件につき3社からの相見積」などの競争入札を通じて最適なサプライヤーを選定します。この際、コストだけでなく、品質、評判、信頼性、納期、サステナビリティも評価対象となります。

 

5. 価格と条件の交渉:サプライヤーが決まった後、調達チームは価格、数量、納期、支払い条件など様々な購入条件について交渉します。

 

6. 発注書 (PO) の作成:サプライヤーの選定と条件の確定後、会社は注文内容や条件を詳細に記載した正式な発注書を発行します。

 

7. 商品の受領と品質チェック:商品到着後は、損傷や誤納がないか慎重に検品し、品質と数量が発注内容と一致しているか確認します。

 

8. 請求書処理と支払条件の履行:納品物が数量・品質の基準を満たしていることを確認後、債務管理(AP)を通じてサプライヤーの請求書を処理し、期日通りに支払いを行います。契約内容によっては早期支払割引や様々な支払方法が適用される場合もあります。

 

9. サプライヤーとの良好な関係の確立と管理:調達チームにとって、サプライヤーとの関係を良好かつ継続的に築くことは非常に重要です。これにより、サプライヤーのパフォーマンスや条件、割引、協力体制、信頼性の向上が期待できます。

 

10. 契約の管理:調達契約の管理では、契約内容の監視やコンプライアンスの確保、必要に応じた条件の再交渉を行います。潜在的な問題を早期に特定・対処し、交渉を通じてコスト削減と利益の最大化を目指します。

 

11. リスクの管理:調達チームが組織にとって重要な理由の一つは、リスク管理の役割です。不足やサプライチェーンの混乱などのリスクを予測・管理し、問題を軽減するための対策を講じます。また、常に規制や要件を把握し、コンプライアンス違反のリスクも管理します。

 

12. レビューと分析:調達プロセスの最終ステップは継続的なレビューと分析です。調達KPIを確認・分析し、ギャップや新たなコスト削減、リスク軽減の機会を見つけることがビジネスの成功に大きく貢献します。

 

これら12のステップは、タスクが重複しプロセスが連続しているため、一般的に調達ライフサイクルと呼ばれます。調達ライフサイクルを円滑に進めるには、予算編成、予測、サプライチェーン管理など他の主要業務との連携が不可欠です。

調達と購買、およびその他の関連するワークフローとの違い

多くの組織では、「調達」、「購買」、「ソーシング」、「サプライチェーン管理」という用語が混同して使われがちですが、これらは異なる概念です。違いは以下の通りです。

 

調達と購買の違い:購買は、取引に焦点を当てた調達プロセスの一部であり、交渉、商品の発注、商品やサービスの受け取り、支払いなどが含まれます。購買は調達の重要な構成要素ですが、調達全体はより広範な活動を含みます。

 

調達とソーシングの違いソーシングは、調達プロセスの初期段階を担い、ニーズの特定、サプライヤーの発見、購入申請の発行、サプライヤーの評価・選定、価格や条件の交渉などを行います。この段階でサプライヤーと強固な関係を築くことが可能です。

 

調達とサプライチェーン管理の違い:調達は、製品の製造や社内業務の維持に必要な商品やサービスの取得に特化した、サプライチェーン管理全体の一部です。調達は、物流、在庫管理、需要計画など、他のサプライチェーン要素とも密接に連携しています。たとえば、VMI(ベンダー主導型在庫管理)のような手法では、在庫補充をサプライヤーが主導するため、調達と在庫管理の連携がより重要となります。

サステナブルな調達の管理

サステナブル調達とは、ESG基準を調達業務や意思決定に組み込むことであり、単なる一時的なトレンドではなく、重要な検討事項です。

 

サステナブル調達の主な課題には、サプライチェーンの複雑さや透明性、パフォーマンスの測定、基準へのコンプライアンス確保、能力構築などが挙げられます。グリーンスチールや再生アルミニウム、再生プラスチックなど、排出強度の低い材料の調達はすでに困難で、今後さらに難しくなると予想されます。さらに、顧客がサステナビリティの信頼性を証明できるブランドを選ぶ傾向が強まっているため、サステナブル調達はビジネスにとって不可欠な要素となっています。

 

サステナブル調達の側面の一つに、サプライチェーン全体の排出量削減があります。このプロセスには長い時間がかかる場合もあるため、今から移行を始めることで将来の競争力やレジリエンスを高めることができます。

 

サステナブル調達の具体例をいくつか紹介します。

  • グリーン調達(グリーンソーシング):グリーン調達は、環境への影響が少ない製品やサービスを戦略的に購入することを指します。これには、使い捨てプラスチック製品などの排除、リサイクルやアップサイクル素材の利用、クリーンテクノロジーやクリーン燃料の導入などが含まれます。グリーン調達は、生産コスト削減やCSR(企業の社会的責任)への貢献、環境意識の高い消費者へのアピールによる売上拡大にもつながります。

  • 材料の倫理的調達:サステナブル調達は倫理的調達が基礎となっています。これは、生活賃金の保証や良好な労働環境の提供、児童労働の排除、地域社会への積極的な貢献、その他の倫理基準を満たす企業から製品を調達することを意味します。

  • カーボンフットプリントとエネルギー消費量の削減:企業の二酸化炭素排出量やエネルギー消費量の削減は、工場や輸送などの日常業務だけでなく、サプライチェーン全体の排出量削減にもつながります。

調達分野におけるAI:より賢い自動化と洞察

調達に AI を活用することで、支出分析契約管理、戦略的調達、コンプライアンス管理などの複雑なタスクの自動化や合理化が可能です。また、分析と意思決定のスマート化も後押しし、機会、潜在的なコスト削減、異常の発見を支援し、新しいサプライヤーの特定を容易にすると同時に、調達に関する不正の排除やミスの削減にも役立ちます。

 

また、AI を活用してビジネスに本当に必要なものを分解したり、既存のプロセスに疑問を提起したり、新しい評価基準から知識を活用したり、さまざまな新しい方法でサプライチェーンを設計したりすることで、ビジネス価値を生み出すこともできます。

 

生成 AI は調達にも大きな可能性を秘めています。そのタスクの自動化、インサイトの提供、透明性向上の能力は、効率性と生産性の向上やサプライヤーの選定と管理の改善を支えます。また、生成 AI はリスクの軽減と支出の削減にも役立ちます。

 

AI を活用して調達部門の意思決定の改善、新たな機会の特定、タスクの自動化、業務効率の改善を支援することで、調達チームは人間の専門知識が最も役立つ領域に集中できるようになります。

調達ソフトウェアに求められるもの

調達ソフトウェアを選ぶ際には、調達プロセスをデジタル化して合理化するだけでなく、戦略的な意思決定を強化するツールを優先すべきです。堅牢なクラウドベースのインフラストラクチャーと AI 機能を備え、複雑な調達タスクをシンプル化するソフトウェアが理想的です。不可欠な機能として、既存の財務およびサプライチェーンシステムとのシームレスな統合、使いやすいインターフェース、詳細な支出分析のための包括的なアナリティクス機能などが挙げられます。

 

リアルタイムのインサイトとレポートを提供し、調達活動の積極的な管理を促進するソリューションを選択してください。また、ソフトウェアが拡張可能か、ビジネスに合わせて進化できるか、会社の成長軌道に積極的に貢献するかどうかも確認してください。

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調達に関する FAQ

「調達から支払いまで (Procure-to-Pay)」は、調達プロセスの後半の段階に特化したプロセスで、特定の製品やサービスの選択、コンプライアンスと注文手続きの実施、商品の受領と品質チェックに続き、最終ステップの請求書処理と支払を含みます。このプロセスは、受注の時点から財務決済までの調達の取引段階に重点を置いています。「調達から支払まで」の詳細を見る

一方、「ソーシングから支払まで (Source-to-Pay)」は、より広範で包括的なプロセスで、製品やサービスの初期ニーズの特定から始まり、ソーシング、契約、およびサプライヤーリレーションシップマネージメントに至るまでの調達サイクル全体を対象として含みます。このプロセスは、調達された製品またはサービスに対する請求書処理と支払条件の履行で完了します。「調達から支払いまで」は通常、ビッグデータとデジタルテクノロジーを統合しそれによって調達ライフサイクル全体を最適化する高度な調達ソフトウェアによってサポートされます。「ソーシングから支払まで」の詳細を見る

戦略的調達は、データ収集、市場調査、支出分析、交渉を結び付けて考えるもので、効率化、サプライヤー選定の改善、価格設定と予測の可視性の最大化を目的とします。戦略的調達の詳細を見る

支出管理は、コスト、リスク、エラーを削減しながら経費を調節しやすくすることを目的に、会社の支出方法を管理するプロセスです。支出管理には、ソーシングから決済までの調達のための支出が含まれますが、通常は給与や売上原価は含まれません。支出管理の詳細を見る

電子調達(e 調達またはデジタル調達)は、商品やサービスをオンラインで依頼、発注、および購買するプロセスです。電子調達は、調達プロセスにおけるやり取り、タスク、取引を一元化し、自動化します。その技術基盤により、効率化、顧客/サプライヤーとの関係強化、ビジネスプロセスの合理化に加え、大幅なコスト削減の機会をもたらします。

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