フィールドサービス管理(FSM)とは?

フィールドサービス管理(FSM)とは、要員のスケジュール管理からレポート作成まで、企業のフィールドリソースの調整に関するあらゆる活動をサポートします。

FSM(フィールドサービス管理)とは?

顧客視点で「フィールドサービス」とは、ただ遠隔地で提供されるサービスではなく、プライベートな空間である自宅や職場で提供されるサービスを意味します。そのため、効率がいいこと、不要な混乱が起こらないこと、作業クオリティが高いこと、といった期待を顧客が持つのは当然と言えます。

 

サービスプロバイダーの視点から見れば、ロジスティクスに関するさまざまな考慮事項があり、顧客の期待に応えるにはそれらの考慮事項を完璧に管理する必要があります。また、解約率が過去最高水準に達する今、企業は常に最高のカスタマーエクスペリエンスを提供しなければならないことを知っています。

 

高度なテクノロジーを基盤とした効果的なフィールドサービス管理は、顧客満足度とサービスプロバイダーの効率をともに向上させる鍵です。

FSM(フィールドサービス)は、企業の本社ではなく顧客がいる場所で実施されるサービス作業を指します。熟練した従業員または契約業者を派遣して、設備やシステムの設置、修理、保守などのさまざまな活動を行います。

  • 設置:新しく購入された機器を顧客先に設置します。

  • 保守:定期的な保守サービスは、既存の問題を正すためのものなのか、問題の発生を防ぐためのものなのかにかかわらず、最も一般的なフィールドサービスになります。

  • 修理または「Break/Fix」サービス:顧客の要求に応じて技術者を派遣して緊急修理を行います。

  • 撤去:撤去サービスは、故障や老朽化した機器・設備の撤去または新しい機器・設備への交換を目的に、分解して現場から運び出します。

フィールドサービスは、通信やハイテク、製造、公益事業など、ほぼすべての業種で行われており、すべてのフィールドサービスが機器・設備に重点を置いているわけではありません。患者を往診する医療従事者など、専門家が「現場」で行う定期的な作業の形を取ることもあります。

FSM の主な構成要素

FSM は、要員のスケジュール管理・派遣、契約管理、データ共有、レポート作成など、企業のフィールドリソースの調整に関するあらゆる活動をサポートします。最も一般的な構成要素には、次のようなものがあります。

  • フィールドサービス・スケジュール管理:サービス予約、予定表、シフトスケジュールの管理に役立つ機能です。最高レベルのソフトウェアでは、AI が活用され、サービスコールを優先順位付けしたり、極めて複雑なスケジューリングを最適化したりできます。

  • 派遣管理:作業割り当てに基づいてサービス要員を派遣するプロセスを簡素化・最適化する機能です。

  • 部品管理:この機能を使うことで、現場での必要性に応じて部品やスペアの十分な供給を維持することができます。

  • サービスレポート/請求書発行:現場でのサービスレポートの作成、ERP システムへの請求書の自動アップロード、顧客への請求書発行などの業務を支援する機能です。

  • フィールドサービス指標/分析/レポート:フィールドサービス指標、分析、レポートは、リアルタイムで利用できる場合は特に、問題の迅速な発見と問題解決のための意思決定に役立ちます。また、サービスレベルアグリーメント (SLA) の遵守状況の確認にも使用できます。

  • モバイル/デスクトップレポート:このようなレポート作成機能は、顧客、製品、サービススタッフを一元的に把握できるようにして、フィールドサービスプロセスの合理化を支援します。最高レベルのソフトウェアでは、デスクトップ、モバイル、およびオフライン対応のダッシュボードやグラフィックレポートがサポートされます。

  • 拡張現実/仮想現実テクノロジー:現場にいない専門家がフィールド技術者を視覚的に誘導できるようにするほか、技術者が迅速かつ安全に作業を完了できるように支援するテクノロジーです。

  • ERP などのシステムとの統合:統合により、フィールドサービス管理を強化する設備資産や契約といった要素をシームレスに管理できるようになります。

正確な構成要素の組み合わせはソフトウェアベンダーによって異なりますが、最高レベルのソリューションであれば、上記機能のうちいくつかは含まれています。

フィールドサービス管理のメリット

特に人工知能 (AI) や機械学習などの高度なテクノロジーを活用することで、FSM はサービス業務に対する比類ない可視性とさまざまなメリットを引き出すことができます。

主なメリットは以下のとおりです。

  1. 初回修理完了率の向上:最高レベルのフィールドサービス管理ソリューションでは、AI が活用され、近距離にいる最適な技術者を即座に特定し、業務に必要な資材が利用可能であることを確認します。最初の訪問でフィールドサービスを適切に完了できれば、顧客満足度が向上するだけでなく、エネルギー効率やリソース効率も高まります。
  2. フィールドサービスプロセスの調和:フロントオフィスとバックオフィスのプロセスを統合して調和させると、効果的なコラボレーションと可視性の向上が実現します。これは、最新のフィールドサービスエクスペリエンスの重要な機能であり、サービスプロバイダーと顧客の双方にメリットがあります。
  3. 環境への影響の低減:サービスに起因する二酸化炭素排出量が削減されるので、サステナビリティ目標の達成が容易になります。より良いルートの検出、最短往復距離、燃料管理の可視化を組み合わせることで、環境への影響の低減に大きく貢献します。
  4. 設備資産の稼動率の向上:フィールドサービス管理は、サービスプロバイダーによる予知保全に高度なテクノロジーを使用する設備資産管理 (EAM) ソリューションにおいて重要な役割を果たします。EAM ソフトウェアは、リアルタイムのインサイト、モノのインターネット (IoT)、高度な予測分析を使用し、パフォーマンスの予測、シミュレーション、および最適化によって設備資産の稼動率の向上を支援します。
  5. コストの削減:プロセスを合理化し、フィールドサービス要員をデータに基づいて、よりインテリジェントに派遣することで、運用コストを抑制しながら、生産性と収益の最大化を支援します。
  6. 技術者の能力強化:最高レベルのソリューションなら、従業員はオフィスのデスクトップからでも、現場のモバイルデバイスからでも、効率的かつ効果的な業務遂行に必要な情報にアクセスできます。各顧客の設備資産情報やサービス履歴だけでなく、リモートサポートに役立つドキュメントも確認可能です。
  7. 顧客満足度の向上:適切なツールとプロセスにより、問題の解決が迅速になり、SLA を確実に遵守することができ、顧客満足度の向上につながります。

フィールドサービス管理における一般的な課題

サービスネットワークの規模拡大と新しいビジネスモデルの出現に従い、フィールドサービス管理は複雑化し、手間のかかるものになっています。結局のところ、フィールドサービス業務には、人員だけでなく、不慣れな地域での移動や交通状況、部品の入手状況、予想外に時間がかかる仕事など、数え切れないほどの複雑化要因が伴います。このような状況において、データ主導型のフィールドサービス管理ソリューションの必要性は明らかです。このソリューションを適切に実装できれば、フィールドオペレーションプロセスで直面する一般的な課題に対処できるようになります。

 

一般的な課題には以下のようなものがあります。

  • スケジュールの競合:人為的ミスや時間のかかる手作業によって、技術者の二重予約、不在技術者のスケジューリング、誤った時刻の予約設定が発生する場合があります。

  • 初回修理完了率の低下:作業内容の連絡ミスや、必要な部品や時間に対する誤った理解により、技術者の再訪問をスケジュールしなければならないことがよくあります。これにより、顧客の不満が生じ、リソースの利用率と効率性が低下します。

  • 不十分な作業指図管理:主に一元化されたデータベースと統合プロセスの欠如に起因する非効率的なワークフローは、プロセスの非効率化とサービスコストの増大を招きます。

  • 不適切なルート計画:A 地点から B 地点までの最適な経路を見つけることや、不慣れな環境を移動することに、技術者が熟練しているとは限りません。その場合、到着時間の遅れ、燃料の浪費、不必要な車両の損耗につながる可能性があります。

  • 社内や顧客との間のコミュニケーションミス:テキスト、メール、ディスパッチアプリなど、多くのコミュニケーションチャネルがあり、メッセージの見過ごしや誤解が大量に発生しています。現場作業員と中央オフィス間の情報共有の遅れにより、顧客はまるで暗闇に取り残されたような状態に陥ります。

  • 安全・責任リスク:フィールドサービスでは、危険な環境で働く技術者や、会社に戻らず常に出張に出ている技術者に特有のリスクがあります。フィールドサービス技術者は、雇用主が彼らのウェルビーイングにしっかりと配慮していると確信できなければ、別の働き口を見つけるでしょう。

  • パフォーマンス管理の欠如:技術者の職務中のパフォーマンスに対する可視性が欠如すると、業務を監督し、彼らの能力と目標を比較し、必要なサポートを提供することが困難になります。

フィールドサービス業務を改善するための 4 つのヒント

すべてはデータにかかっています。データこそがインサイトを生み、ビジネスオーナーはこれらのインサイトに基づいて戦略的な意思決定を行い、社内業務とカスタマーエクスペリエンスを向上させることができます。

 

ビジネスのインサイトを活用してフィールドサービス業務を改善するには、以下の 4 つの方法があります。

  1. スマートなスケジューリングと派遣管理:適切なツールを携えた適切な技術者を派遣し、最初の訪問で作業を完了します。効率性を高めるために、各技術者の移動時間を最小限に抑えるようにルートを設定します。これにより、ルートごとに可能な限り多くのサービスを提供できるようになり、燃料、時間、エネルギーだけでなく、行ったり来たりしなければならないというフラストレーションも減らせます。
  2. 緊密な社内コラボレーション:効果的で効率的なフィールドサービスには、個々のチームをはるかに超えた社内コラボレーションが必要です。営業担当者から技術者まで部門全体が、会社のプロセス、サービス基準、顧客要件に従って、顧客の期待以上の効率的なサービスを提供する必要があります。
  3. 事前対応型の計画および予知保全:緊急サービスとそれに付随する関係者全員のストレス(特に、サービススケジューリングと技術者の派遣を伴う場合)をよくあることではなく、まれなことにする必要があります。定期的な予防保全や予知保全を可能にする高度なテクノロジーを使用すると、関係者全員が可能な限り最高のメリットを得られる事前計画を立てられるようになります。
  4. 顧客志向の適応型プロセス:最後に、顧客に合ったサービスを提供します。今日、顧客は高い期待を抱き、連絡手段の好みがあり、サービスが不十分であれば代わりの業者を自由に選択できます。完全統合された FSM であれば、顧客の好みに合わせてプロセスを調整できる俊敏性が得られます。企業は顧客の要件を予測でき、顧客は常にタイムリーな最新情報と正確な見積を受け取れるようになります。

さまざまな業界におけるフィールドサービスの例

あらゆる業種の企業が、フィールドサービス管理ソリューションを活用して、カスタマーエクスペリエンスや効率を向上させています。具体的な事例をいくつかご紹介します。

 

産業用機械製造: 鉱山機械の大手メーカーである Weir Minerals 社は、顧客の機器稼働率とデータ管理の向上を必要としていました。そこで Weir 社は、紙ベースのプロセスだったフィールドサービス管理をデジタル化し、ERP と統合しました。現在、同社ではデータをリアルタイムで収集・分析しています。これにより、フィールドサービス管理の合理化、遠隔地で働く従業員に対するより適切なサポート、より良いカスタマーエクスペリエンスの提供が可能になりました。

 

商社・卸:Patterson Dental 社は、米国中の歯科医に歯科医療機器を提供しています。同社は単一の統合ソリューションでフィールドサービスの管理プロセスを合理化することで、フィールドサービスの予約スケジュールをより効率的に組み、技術者が修理を迅速に完了するために必要なデータを提供できるようになりました。

 

公益事業:エネルギー供給会社の Chesapeake Utilities 社は、分散した旧式の IT システムを統合して、業務を最新化したいと考えていました。そこで同社は、SAP Field Service Management を活用することで、業務の自動化と効率化を実現しました。この変革により、同社はサービス提供を強化し、カスタマーエクスペリエンスを改善し、将来の成長に向けた貴重なインサイトを得ています。

フィールドサービス管理の未来

今後、AI、IoT、予測分析などのテクノロジーにより、フィールドサービス管理の変革が続いていくことに疑問の余地はありません。フィールドサービス管理にデジタル化、緊密に統合されたプロセス、コネクテッドアセット、予知保全が加わることで、収益性の高い新サービスが生まれ、カスタマーエクスペリエンスはさらに高まることになるでしょう。また、モバイルソリューションと拡張現実 (AR) により、あらゆる設備資産に関する正確な情報をどこからでもサービス技術者に提供できるようになります。技術者は、機器・設備の状態、必要な交換部品、次の保守/修理ステップに関するリアルタイムのインサイトにリモートアクセスできるようになるので、サービス技術者の役割も進化していくと考えられます。

SAP Field Service Management が選ばれる理由

最高水準のフィールドサービス管理ソフトウェアソリューションにはデータ駆動型であるという共通点があります。SAP のソフトウェアは、リアルタイム業務データの常時収集と AI 分析が可能で、多くの場合、問題が生じる前に十分な情報に基づいて事前対応型の意思決定を行うことができます。

 

さらに、フィールドサービス管理における AI の活用は、業務データの分析に留まりません。AI は、フィールドサービス管理の成功を阻む最大の障壁となるスケジューリングでも活用されます。SAP の AI 主導型スケジューリング機能を使用すれば、サービスの依頼や呼び出しに重要度に応じた優先順位を付けることができ、スケジュールや要員の派遣をリアルタイムに最適化し、今後の計画をカスタマイズできます。また、予測型のルート設定機能によって、SAP のスケジューリングシステムはさらに強固なものになっています。この機能を使用すれば、現在および将来の交通状況を予測できるため、リソース配分の動的な最適化に加え、変化するニーズに対応できるよう先を見越して調整を進めることができます。

 

SAP Field Service Management は、効果的なフィールドサービス管理において可視化とコラボレーションが決定的に重要であることを踏まえて、ダッシュボードとグラフィカルなレポートでサービス全体をあらゆる角度から把握できるようにします。これにより、顧客、コネクテッドプロダクト、サービススタッフが可視化されます。さらに、オンラインにもオフラインにも対応したモバイル機能により、サービス技術者は、サービス作業や部品在庫が必要な顧客資産に関する正確な情報に、リアルタイムにいつでもアクセスできます。

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最新のフィールドサービス管理ダッシュボード

モバイルツールおよびレポート作成機能を使って、技術者は最も重要なナレッジやガイダンスにアクセスしながら、完全なオンサイトサービスレポートを作成できます。

 

SAP のフィールドサービスオファリングは、ERP および EAM システムと緊密に統合できるため、カスタマーエクスペリエンスの完全な一元化にも役立ちます。また、顧客請求書の発行や他のシステムへのアップロードの自動化により、バリューチェーン全体を接続し、物理資産のライフサイクル全体に対するインテリジェントな事前対応型の管理を実現します。

よくある質問 (FAQ)

FAQ(よくある質問)

フィールドサービス管理 (FSM) とは、従来のオフィス以外の環境(通常、「フィールド」と呼ばれる)で行われる業務を整理し、最適化するための包括的なアプローチを指します。この戦略では、効率性、生産性、高品質なサービス提供の確保を目的として、さまざまなフィールドサービスに関連する作業、リソース、および人員の管理に重点が置かれます。幅広い活動と業種がフィールドサービス管理の対象となり、一般的に、顧客サービス、販売、設置、修理・保守、検査などが含まれます。

企業が現場での作業やサービスをシームレスに実行・提供する上で、フィールドサービスは極めて重要な役割を担っています。フィールドサービス部門は、従来のオフィス以外での業務の管理を担当し、顧客の拠点で直接、相談や修理、保守、販売、カスタマーサポートなどの活動に従事します。この部門の主な目標は、リソース稼働率を最適化し、業務効率を高め、高品質なサービスを提供することです。フィールドサービス担当者は、技術的な問題の解決から定期検査の実施まで、さまざまな課題に対処することができ、最終的にはカスタマーエクスペリエンスを改善し、会社の成功に大きく貢献することができます。

FSM は、人工知能 (AI) を組み込んで効率化を図り、従来のオフィス以外で行われる業務を最適化します。また、相談、販売、保守などの業務を調整し、AI を活用してインテリジェントなスケジューリング、予測分析、自動化を実現します。ほかにも、リアルタイムのコミュニケーション、モバイル機器での作業管理、インテリジェントなリソース配分に重点を置き、変化の激しい現場で業務効率を高め、サービス品質を向上させます。

フィールドサービスマネージャーは、フィールドサービス活動の遂行を監督・最適化して、チームをまとめ、作業指図を管理し、リソースの効率的な配置を確実に行います。また、スケジュール作成、作業の進捗確認、現場と関係者間の効果的なコミュニケーションの維持を担当します。フィールドサービスマネージャーは、問題を解決し、質の高いサービス提供を確実なものにするだけでなく、現場業務の管理とカスタマーエクスペリエンスの改善によってビジネス目標全体に貢献する上でも重要な役割を果たします。

フィールドサービス技術者の管理では、効率的にサービスを提供できるように、スケジュール、割り当て、およびパフォーマンスを監視します。これには、戦略的計画の策定、詳細なスケジュール設定、コミュニケーションに使われるモバイルテクノロジーの活用などが含まれます。技術者にとっては、明確な指示、ツールへのアクセス、AI などの最新テクノロジー、継続的なトレーニングなどのメリットがあります。効果的な管理を行うには、課題への迅速な対応、サポートの提供、コラボレーティブな環境の構築が不可欠です。

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フィールドサービス管理ソリューションの詳細を見る

包括的なフィールドサービス管理によって、顧客の問題を迅速に解決します。

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フィールドサービスチームのデジタル化

ボッシュ・レックスロス社との 2 回にわたるオンデマンドウェブキャストを視聴して、高品質なフィールドサービスサポートがビジネスをどのように成功へと導くかをお確かめください。

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