ERP 導入とは何か?
エンタープライズリソースプランニング (ERP) システムの選択は始まりにすぎません。事前準備の段階から移行後まで ERP 導入のベストプラクティスに従うことで、落とし穴を回避し、避けることが可能なコストやリスクを避けることができます。
ERP 導入の概要
ERP システムの導入について最初に理解すべきことは、ERP(エンタープライズリソースプランニング)とはいったい何であるかということです。ERP を最も簡潔に定義するために、まず、企業運営に必要なすべてのコアビジネスプロセスを挙げてみましょう。経理・財務、人事、製造、サプライチェーン、サービス、調達・購買などがあります。ERP とは、最も基本的なレベルでは、これらすべてのプロセスを 1 つの統合されたシステムで効率的に管理できるようにするソフトウェアを指します。ERP は、組織のレコードシステムとも呼ばれます。
効果的に導入された ERP システムがなければ、企業はサイロ化した多くのプロセスとレガシーシステムに悩まされることになります。そのような状態では、レポートサイクルに時間がかかり、エラーが発生しやすくなります。また、リアルタイムデータへのアクセスが制限され、信頼できる唯一の正確な情報源が存在しない状態となります。そのため、企業の規模に関係なく、ビジネスリーダーたちは ERP システムを導入し、リスクを軽減しながら競争力を高め、事業運営を最適化することを目指しています。
しかし、ERP システムを企業のプロセスや IT 環境に統合するのは、とても大きな取り組みになることがあります。開始する前に、導入のメリット、潜在的な落とし穴、ベストプラクティスを知っておくことが重要です。
ERP システムの導入がもたらすビジネス上のメリット
ERP システムの導入には多くのメリットがあります。特に、クラウドベースの ERP ではメリットはさらに大きくなります。そして、そのようなメリットは企業ごとに異なります。例えば、プロフェッショナルサービス企業が ERP システムを選択する理由は、製造会社とは大きく異なります。
しかし、次の 3 つの ERP 導入のメリットはすべての組織に当てはまります。
実用的なインサイトをリアルタイムで提供: 情報にアクセスし、それに基づいて行動することが難しいと、リアルタイムでビジネスを舵取りするのは困難です。ERP システムを導入することにより、ビジネスリーダーは、絶え間なく変化する厳しいビジネス環境でも、データの一元化、企業の財務ポジションの継続的な監視、レポートの管理を行うことができます。
事業運営の効率の向上: 手作業に依存した分断されたシステムを使用してビジネスを管理するのは、高コストで手間がかかるだけでなく、エラー、遅延、顧客の不満にもつながります。ERP ソリューションを活用して手動プロセスを自動化することにより、時間の節約、労力の削減、コストの削減、収益性の向上が実現します。
導入、使用、保守のシンプル化: 完全にサポートされていない、または変化に対応していないサイロ化した基幹業務システムによって運営されている拠点が複数の地域に存在すると、テクノロジーの進歩について行くことは複雑になります。クラウド ERP を導入することで、あらゆる場所でアップデートをスケーラブルかつ自動で行えるようになります。
ERP 導入の戦略
システムを導入しようとする際は、必要な機能を検討するところから始めるのが一般的です。しかし、肝心なのは新しい機能やテクノロジーではありません。ビジネスの成長に必要なのは、俊敏性と対応性を備えたモダンなビジネスプロセスです。
既存のプロセスは柔軟性や俊敏性に欠け、ビジネスニーズを満たすことができない傾向があります。費用対効果が高く実績のあるプロセスを導入していたとしても、ニーズの変化に応じて更新したり、新機能(AI、モバイルアクセス、アラート、ビジネスインテリジェンスなど)によって強化したりする必要が生じることが多くあります。したがって、導入計画はプロセスを中心に組み立てることが重要です。また、企業の複雑度が高いほど、より包括的で洗練された導入アプローチが必要になります。
あらゆる規模の企業に当てはまる ERP 導入プロジェクトのアプローチのための 4 つの一般的な戦略を以下に示します。
- ビッグバン: システムまたはプロセス全体を一度に導入します。この方法は、古いシステムから新しいシステムへ移行する際によく使用され、すべてを同時に切り替えます。このアプローチはすぐにメリットをもたらし、並列運用の必要性が減りますが、大きなリスクも伴います。導入時に発生する問題は広範囲に及ぶ可能性があり、突然の変化はユーザーやステークホルダーにとって大きな負担になる可能性があります。ビッグバンアプローチは、時間の制約やプロジェクトの性質によって段階的な ERP 導入が現実的でない場合に選択されることがよくあります。
- 段階的ロールアウト: システムまたはプロセスを徐々に段階的に導入します。多くの場合、異なる部門、場所、またはユーザーグループが段階として選ばれます。この方法では、それぞれの段階で慎重なモニタリングと調整が可能であり、混乱が広範囲に及ぶリスクが軽減されます。導入の範囲を徐々に広げていくことで、問題が生じたときにそれに対処でき、次の段階に進む前にそれぞれの段階で学んだことを生かすことができます。このアプローチでは、システムの完全な導入に至るまで時間がかかりますが、移行がスムーズになり、ユーザーの受け入れも向上します。このアプローチは、大規模な ERP 導入で大きなリスクが生じる可能性のある複雑なプロジェクトで特に役立ちます。
- パイロット導入: 大規模なロールアウトの前に、コントロールされた環境または限定的なユーザーグループで、小規模な新しいシステム、プロセス、または製品を導入します。パイロットの主な目的は、システムの機能をテストし、潜在的な問題を特定し、ユーザーからフィードバックを得ることです。このアプローチでは、より広範囲の導入の前に調整や洗練が可能であり、全面的な実装で失敗する可能性が低くなります。成功したパイロットは、ステークホルダーからの信頼を築き、大規模な ERP 導入のための概念実証として機能します。
- ハイブリッドアプローチ: ビッグバン、段階的ロールアウト、パイロット導入など、複数の導入戦略の要素を組み合わせて、プロジェクトの具体的なニーズに合わせて計画を調整します。たとえば、コア機能向けに段階的ロールアウトを採用し、同時に一部の領域の新機能に関してはパイロット導入を採用するといったことが考えられます。このアプローチは柔軟性を提供し、リアルタイムのフィードバックと進化する状況に基づいた調整が可能になります。ハイブリッドアプローチは、さまざまな戦略の強みを活用することで、リスクを軽減し、リソースを最適化し、ERP 導入を成功させる可能性を高めます。
ERP プロジェクトチームの役割
どのような戦略を採用する場合でも、ERP プロジェクトの成功にとって他のどの要素よりも重要な要素があります。それはチームです。すべての ERP 導入事例に共通する教訓があります。それは、導入チームこそが成否を分ける要因であるということです。導入チームとは、最初からプロジェクトを形作っていく人達のことです。
優れた ERP ソフトウェアは、強力なチームによって導入されることによって初めて成功を収めることができます。作業を効果的に進めるために必要な時間、サポート、またはスキルが不足していれば、チームはうまく回りません。そうすると、プロジェクトの遅延や追加コストが発生したり、ソフトウェアが会社のニーズを満たさないといったことが起こりがちです。
ERP の導入で挫折や失敗を経験した企業の多くは、プロジェクトに取り組む「暇がある」スタッフをプロジェクトに割り当てていました。しかし、ERP プロジェクトでは「なくてはならない」人材を確保する必要があります。つまり、ビジネスプロセスを理解し、同僚と協調して働くことができ、経営幹部から信頼されている多忙な人物です。そのような人物をフルタイム(週 40 時間)または可能な限り多くの時間、プロジェクトに割り当てる必要があります。
週に 25% 以上(最低 10 時間)の時間を割くことができない人は、主要プロジェクトチームに追加すべきではありません。それ以上の時間を割けないチームメンバーは、プロジェクトのさまざまな活動についていくのが精一杯で、何の価値ももたらさないでしょう。
経営幹部がチームをサポートすることも不可欠です。重要な ERP 導入プロジェクトでは必ず、優先事項とリソース配分のトレードオフに関する意思決定を行わなくてはなりません。強力なサポートとコミットメントが得られなければ、有能なチームでさえ悪戦苦闘することがあります。
モダンな ERP システムを短期間で導入することは、企業にとって非常に重要な取り組みであり、プロジェクトの開始から適切な人材を確保することが不可欠です。
新しい ERP 導入プロジェクトを計画するためのステップ
あらゆる ERP プロジェクトで、必然的に予期せぬ問題が発生します。しかし、ERP 導入を成功させるためのベストプラクティスに従うことで、発生した問題を特定して対処し、リスクとコストを管理することができます。
導入の流れについて現実的なスケジュールを組むことが重要です。プロジェクトに関与するリーダーシップチーム、マネージャー、社内エキスパートの空き状況を常に考慮する必要があります。また、ニーズに優先順位を付けてください。これにより、大きな成果を出すことに重点を置きながら、ビジネスニーズに応じて拡張可能なソフトウェアとテクノロジーの基盤を構築することができます。
ERP 導入計画策定の主なステップ
詳細な最終計画と主要業績指標 (KPI) は具体的なビジネス要件に合わせて調整されることになりますが、あらゆる ERP 導入の成功事例に共通するステップとして以下の重要な活動があります。
新しい ERP 導入を計画するためのベストプラクティス
1. 導入を支援するソフトウェア/サービスパートナーの選定
ERP ソフトウェアの調査と評価のプロセスが完了したら、ほとんどのプロジェクトチームは ERP ソフトウェアの導入についてあまり経験がないため、選択したシステムの導入を支援してくれるパートナーを選定します。選択した ERP アプリケーションに関する詳しい知識と経験のある適格な ERP 導入コンサルタントを探し、選定しなければなりません。パートナーの選定に当たっては、自社の現在のビジネスプロセスとその変化に新しい ERP ソリューションがどう対応するのかをパートナー候補が理解していることを確認する必要があります。たとえば、専門知識を証明するための事項について尋ねたりします。
パートナーの条件としては、特定の業界に関するトレーニングを受け、必要な場所に勤務できるスタッフがいることが挙げられます。世界的に活動しているお客様やサプライヤーの場合は、多国籍ビジネス、多言語、多通貨に対応できるパートナーであることが、導入を効率的に進める上で欠かせません。最後に、パートナー候補が利用しているプロジェクト管理ソフトウェアについて調査し、自社内の計画・スケジューリング・追跡システムと互換性があることを確認する必要があります。
2. プロジェクトの全タスクのリストアップ
ERP 導入パートナーは、行うべきことをすべて列挙した詳細なタスクリストの作成を支援します。
このリストは長大なものになります。例えばトレーニングだけでも、次のように多数のタスクがあります。
プロジェクトチームのトレーニング: ERP プロジェクトチームは、ビジネスプロセスをどうカスタマイズするか判断できるように、ソフトウェアについて学ぶ必要があります。
IT チームのトレーニング: IT チームは、ERP システムの最適な導入・保守方法についてトレーニングを受ける必要があります。
ビジネスユーザーのトレーニング: ERP ソフトウェアのすべてのエンドユーザーがその仕組みについて学ぶ必要があります。
継続的なトレーニング: 新規のユーザーは、入社時にトレーニングを受ける必要があります。したがって、長期的なオンボーディング計画を立てなければなりません。
タスクリストは複数のフェーズに分割します。カンファレンスルームパイロット、アプリケーションのカスタマイズ、ほかのアプリケーションおよびデータソースとの統合、インフラの導入、データクレンジング、ユーザー受け入れなどのフェーズに時間を割り当てる必要があります。
3. 作業時間の算出
すべてのタスクの所要時間を慎重に見積もります。各タスクに含まれる作業を考慮し、たとえ数時間であっても、必要な「作業時間」を割り当てます。そして、作業時間を ERP プロジェクトのフェーズごとに合算し、その作業を担当するプロジェクトチームメンバーを割り当てます。
これは大変な作業になる可能性があります。だからこそ、導入予定の ERP ソリューションを熟知したパートナーの支援を得ることが重要なのです。このステップは、タイムラインを正確に計算したり、現在のチームに支援が必要かどうかを判断したり、スコープクリープを制限したりするために不可欠です。
4. 現実的なスケジュールの作成
必要かつ可能な作業時間を一覧表にまとめたら、管理可能なスケジュールを作成します。多くの場合、初回のスケジュール作成時には、経営幹部に当初提示した導入スケジュールと比較すると、キャパシティの問題があることが明らかになります。
以下の計算例では、生じる可能性のある差異を明らかにしています。
本稼動開始までの目標所要期間 = 12 カ月すなわち 1 年
12 カ月間で利用可能な作業時間の合計 = 540 時間/週すなわち 2 万 8,080 時間/年
導入に必要な作業時間の合計 = 計 4 万 2,000 時間
必要な時間を 1 年当たりの利用可能時間で割った数 = 1.496 年
この計算結果を見ると、本稼動開始の目標日に間に合わないことがプロジェクト開始前から確定していることが分かります。考えられる解決策は次のとおりです。
スコープを縮小する(場合によってはチームが「不可欠」と見なすタスクも削る)
現実的な日付まで目標日を延長する
内外のリソース(利用可能な作業時間)を増やす
プロジェクトを複数のフェーズに分ける
ここで、経営幹部チームの判断が求められます。そしてこれは、ERP ソフトウェアの選定・導入プロセスに経営幹部が関与すべきである理由の一例でもあります。
5. カンファレンスルームパイロットの実施
プロジェクトをキックオフしたら、本格的な展開に先駆けて試運転すなわちパイロットを(会議室で)実施します。カンファレンスルームパイロットと呼ばれるこの作業の目的は、ビジネスプロセスが自社の現在および将来のニーズに即した適切なものであることを確認することです。新しいプロセスを設計する際は、ERP システムで利用できるオプションの範囲を理解することと、プロジェクトチームおよびユーザーコミュニティのステークホルダーと共同でプロセスの妥当性を確認することが重要です。
数週間を要するこのフェーズでは、ERP 導入パートナーがパイロットソフトウェアをインストールします。このソフトウェアを使用してすべてのプロセスを試運転し、それらが想定どおりに機能し、想定外の動きをしないことを確認します。この時点でベストプラクティスを適用すると時間を節約できる場合があります。特に、設定ツールを使用してプロセスを調整し、プロセスをより良いものにすることにより、これが実現されます。
6. データクレンジング
データクレンジングは、単純なようで非常に時間のかかる作業です。データの正確性の評価には、なるべく早く着手するのに越したことはありません。なぜなら、このステップを正しく完了するには多大な労力を要するからです。プロジェクトの実施中は、おそらくビジネスプロセスの変更が生じるので、導入中にデータ管理のステップが増えることも覚悟しなければなりません。
7. 全員への定期的な情報提供
毎週、プロジェクトチームの誰かが主要なステークホルダー全員と連絡を取り、導入プロジェクトの進捗状況のプラス面と「あまりプラスではない面」について知らせるべきです。最悪のシナリオは、ステークホルダーが最新情報を定期的に知らされることのないまま、不意を突かれることです。プロジェクト管理システムの大半には、ERP プロジェクトの進捗状況を可視化する機能が搭載されています。
ポッドキャスト「Cloud ERP Playbook(クラウド ERP プレイブック)」
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重要なプロセスと機能に優先順位を付ける
すべてのビジネスが同じ問題を抱えているわけではありません。したがって、該当するすべてのビジネスワークフローをレビューして、まずどれから取り組むべきか設定するのが賢明です。
考慮すべき価値の高い領域を以下に挙げます。
財務および会計: リアルタイムの正確な財務取引、KPI およびアナリティクスは、あらゆるビジネスに不可欠であり、すべての拠点と部門に適用される必要があります。これらは会計だけでなく、原価計算、予算策定、予測、プロジェクト、設備資産管理、コンプライアンス、資金管理と統合されなくてはなりません。
サプライチェーン管理 (SCM) および製造: タイトなスケジュール、利益率の低さ、そしてサプライチェーンの混乱は、あらゆるビジネスで課題となっています。これにはチームで取り組む必要があります。つまり、サプライヤー、運送業者、輸出入業者、銀行、その他のパートナーと協力し、通常はさまざまな拠点をまたいでモバイルデバイス上で連携します。
顧客関係管理 (CRM): CRM プロセスはビジネスのあらゆる部分に関係します。直販、卸売業者、小売ショールーム、e コマース、顧客・フィールドサービスでは、受注管理、オペレーション、購買、エンジニアリング、売掛金管理、出荷などの部門と顧客情報を共有する必要があります。
人事 (HR): 多様性に富んだ労働力を管理することには困難が伴います。給与計算、福利厚生、予算策定、スケジューリング、そしてコンプライアンス上のニーズのために、従業員情報が格納された人事システムに人事チームがすばやく安全にアクセスできるようにする必要があります。 また、従業員の採用、育成、維持は、現在のビジネス計画や今後提案されるビジネス計画を評価する上でも重要です。
ビジネスインテリジェンス(管理アラートやダッシュボードを含む): オフィスや自宅、外出先のどこにいても、基幹業務チームがビジネス上の問題を迅速に解決できるように、問題に関する最新情報をすばやく把握し、詳細を簡単に調査できる必要があります。これには、組み込み型のビジネスインテリジェンスと、単一のデータベースで管理されるデータが欠かせません。
多言語、多通貨、多拠点: ビジネスを拡大する場合、特に新たな地域や国へ進出する場合は、一貫性を持って迅速に新事業を立ち上げ、拡大する能力がますます重要になっています。そのためには、広範かつ高度な ERP ソフトウェア機能を利用できることに加え、各拠点のソフトウェアプロバイダーから一貫したサービスが受けられることが不可欠です。
モビリティ: 従業員がリモートワーク時に情報にアクセスできるようにするという要件は、モダンな働き方のモデルにおいては必須事項です。クラウドベースの ERP ソリューションでは、ビジネスシステムにどこからでもアクセスできます。
ERP 導入のリスクを軽減するためのヒント
どのソフトウェア導入プロジェクトにもリスクは付き物ですが、以下の 5 つの重要なヒントを取り入れれば、期限と予算を守ってプロジェクトを完了できる可能性が高まります。
- 業界および各国や地域特有のノウハウを持つソフトウェア/ビジネスプロセス/導入パートナーを選びましょう。同じようなビジネスまたは業種の照会先企業への聞き取り調査を必ず行うようにします。
- 時代遅れのテクノロジーをいつまでも使うべきではありません。古く時代遅れのスタンドアロン型システムは可能な限り廃止して、データを単一のデータベース(唯一の正確な情報源)に統合し、ビジネスインテリジェンスを活用し、全世界からアクセスできるようにして、一貫性のあるパフォーマンスを発揮できるようにしましょう。
- 選択する ERP ベンダーが、クラウド統合に関する能力とサプライヤーネットワークに関する専門知識を持っていることを確認しましょう。デジタルエコノミーにおいては通常、複数のビジネスユニット間でシステムを統合するだけでなく、外部の顧客やサプライヤーとの統合も必要になります。
- プロジェクトスコープのクリープを防ぎましょう。ERP の導入中にニーズや機会が明らかになるのはよくあることです。遅延やコスト超過を防止するために、変更指示を管理することが重要です。
- ERP ベンダーが、すべてのビジネス拠点で一貫した専門性を発揮できることを確認しましょう。多くの場合、現地の経営陣、ソフトウェア販売代理店、コンサルティング会社、ソフトウェアパートナーなどの協力を得る形で、トレーニング、導入、サポートを実施する必要があります。
余分な ERP 導入コストを避けるためのヒント
新しい ERP システムへの投資には、会社がつぎ込む時間、ビジネスプロセスおよび導入に関するコンサルティング、ソフトウェア、クラウドサービスに加えて、エンドユーザーのデバイスやその他のハードウェアに関する投資も必要です。したがって、プロジェクトとそのコストをコントロールすることが重要です。
追跡すべき主な領域を以下に挙げます。
総所有コスト (TCO) を常に重視する。総コストを管理し、長期的なメリットを把握することで出費を最小化し、利益を最大化できます。ERP システムの導入はビジネスに大きな影響を及ぼします。
ビジネスの方向性に合わせ、不要なプロセス変更を無理に行わない。 企業は多くの場合、ERP ソフトウェアに合わせて業務運用を変更することを迫られますが、これは導入コストと運用コスト両方の増加につながります。
自社に大きな価値をもたらす定型的なビジネスプロセスに焦点を絞る。例えば、顧客注文の管理、価格の更新、新製品・サービスの追加、製造詳細の変更、新規採用者のオンボーディングなどのプロセスです。
カスタマイズを避け、設定可能なユーザーインターフェース、ダッシュボード、アラート、ワークフロー、ビジネスインテリジェンス、モバイル機能を活用する。これらの機能を活用すれば、全部門で業務を効率化できるだけでなく、必要に応じて迅速かつコスト効率よく調整を行うことができます。
システムハッキングとデータ漏えいは高くつく。インターネットを利用する場合は、可能なら安全なクラウド ERP ソリューションを使用してください。ソフトウェアおよびサービスのサプライヤーが安全なソフトウェア導入オプションを幅広くサポートしているか確認しましょう。
ERP 導入の ROI の測定
ERP の導入後、すべての企業にとって避けられない質問があります。それは、「この投資から期待したものが得られたか」です。
ERP 導入の ROI を計算するには、発生した総コストと、システムがもたらす有形の利益と無形の利益を合算したものを評価します。このプロセスは、組織の戦略的目標に沿った KPI の特定から始まります。たとえば、業務効率の向上、在庫コストの削減、売上の増加、意思決定機能の強化などがあります。システムの影響を評価するには、ERP 導入の前と後の両方でこれらの KPI を追跡する必要があります。たとえば、ERP システムによって在庫管理が合理化され、維持コストと欠品の削減につながった場合は、これらによって節約された金額を ROI の計算に直接リンクすることができます。
また、コスト削減と収益向上を ERP システムの総所有コスト (TCO) と比較することも重要です。これには、ソフトウェアとハードウェアへの初期投資だけでなく、保守、トレーニング、システムアップグレードなどの継続的な費用も含まれます。
最後に、ERP 導入のメリットの中で、データ精度の向上、コンプライアンスの向上、顧客満足度の向上などの要素は、簡単に定量化できないものの、ビジネスの全体的な成功に大きく寄与することを認識することが重要です。これらの要素をバランススコアカードのアプローチに含めることで、ERP システムの ROI をより包括的に把握できるようになり、短期的な財務上の利益と長期的な戦略的メリットの両方が評価に反映されるようになります。
ERP は導入したら終わりではない
ERP 導入は、初期導入の本稼働時、つまりは企業が日常業務に新しいシステムを使い始めたときに、技術的に完了したとみなされます。ただし、最初の本稼動開始後も、新しい拠点、新製品、新しいサービスライン、買収などの機会に対応するために機能を追加し、ERP システムを引き続き拡張していく必要があることに注意してください。 したがって、最初の ERP 導入は重要なマイルストーンですが、導入プロセスは最適化とイノベーションの継続的な取り組みになるのです。
また、テクノロジーのランドスケープは進化し続けています。これにより、顧客やサプライヤーと協力していく方法の新たな可能性が開かれたり、業界のビジネスのあり方が再定義されたりすることがあります。デジタルトランスフォーメーションのプロジェクトでは、機械学習や人工知能 (AI)、モノのインターネット (IoT) 技術を利用した機器や車両との統合などの新しいテクノロジーが活用されており、スピードと効率の向上が図られています。
ERP 導入についてさらに詳しく知る
最適なクラウド ERP を見つける
最初の ERP を導入する場合でも、既存のオンプレミスアプリケーションをクラウドに移行する場合でも、SAP にはそれぞれの状況に適したクラウド ERP があります。SAP S/4HANA Cloud は、ミッションクリティカルな運用から AI 主導のビジネスモデルのイノベーションまで、あらゆるビジネスニーズに対応する ERP です。