財務管理システム (FMS) とは?

FMS とは、組織の収入、経費、資産を管理するために使用するソフトウェアとプロセスです。

財務管理システムの概要

最古の会計記録は、7,000 年前の古代メソポタミア遺跡で発見されました。これは車輪の発明よりも 3,000 年以上も前のことで、人間社会の進化において貿易と商業が歴史的にも文化的にも重要であることを物語っています。しかし、近代簿記が誕生したのは、イタリア人数学者のルカ・パチョーリが複式簿記を広めた 15 世紀後半に入ってからのことです。近代簿記を使用して、企業は現在(貸方)と将来(借方)の両方の状況を把握することができるようになり、初歩的な財務管理システムが誕生しました。当然ですが、最新の財務管理システムはパチョーリの時代のものから大きく進化しています。

財務管理システムの定義

財務管理システムは、組織の収入、経費、資産を管理するために使用するソフトウェアとプロセスです。財務管理システムの目的は、日常の財務業務のサポート以外にも、利益を最大化し、企業の長期的なサステナビリティを確保することなどがあります。財務管理システムを使用することで、財務チームは次のことを行えるようになります。

  • 請求書作成と集金の簡略化

  • キャッシュフローの最適化(日次、月次、年次)

  • 監査証跡の維持と会計規則の遵守

  • 財務プロセスの自動化と会計エラーの削減

  • より的確な予算編成、予測、プランニングの実現

  • 決算処理と報告書作成業務の迅速化

  • ほか多数

財務管理ソフトウェアは通常、会社で運用しているエンタープライズリソースプランニング (ERP) システムの一部になります。ERP システムは財務データと業務データを統合し、事業に関する総合的な情報を各チームに提供します。また、スタンドアロン型の財務アプリケーションを組み合わせて、エンドツーエンドの財務管理システムを構築することも可能です。迅速な拡張により事業拡大に対処し、さまざまな地域、言語、通貨、規則に対応した機能を提供する クラウドベースの ERP と財務管理システムを選ぶ CFO が増えています。

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支出差異のモニタリングと管理が行われている財務管理システムのスクリーンショット

財務管理システムの必須コンポーネント

効果的な財務管理システムを導入している企業は、会計ソフトウェア一式と信頼できる唯一の情報源を確保できます。システム内には、次の 4 つのカテゴリーに分類できる多種多様なツールが用意されています。

  • 一般会計および決算処理:財務会計と決算処理のツールで、総勘定元帳、債務管理 (AP)、債権管理 (AR)、給与計算など重要な経理関連作業をサポートします。こうしたツールを使用することでチームは、レポートの作成、財務諸表(収入、経費、残高を記したもの)の作成、および決算処理を、効率的かつ迅速に行うことができるようになります。税務管理機能も、税務処理の精度とコンプライアンスを確保するのに役立ちます。

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債権管理の状況を示す財務管理システム

  • 収益、現金、財務・資金管理:収益会計ツールを使用することで、財務チームは請求プロセスを自動化し、最新の支払い情報を分単位で表示し、IFRS 15 などの収益認識に関する法規制を遵守することができます。財務・資金管理ツールにより、各チームはキャッシュフローの予測、流動性の向上、事前のリスク軽減ができるようになります。また、このソフトウェアは銀行システムとも統合されているため、ユーザーは銀行残高をリアルタイムで確認し、口座の照合をシンプル化できます。

  • 財務計画・分析:計画、予測、予算編成、および分析に関わる一連のツールは、CFO とそのチームが会社の全体的な財務健全性をサポートするのに役立ちます。財務計画・分析 (FP&A) ソフトウェアは、コストと収益性を分析し、パフォーマンスを改善し、将来の状況を予測して乗り切り、迅速かつ正確な意思決定を下せるよう経営幹部をサポートするのに不可欠です。また、複数シナリオによるプランニングや、財務とその他部門間のコラボレーションのサポートにも役立ちます。

  • ガバナンス、リスク、コンプライアンス:GRC ツールは、各チームがその活動をビジネス目標に合わせて調整し、さまざまなタイプのリスクを特定して軽減し、GDPR や SOX、国際的な貿易協定などの法規制を確実に遵守するのに役立ちます。コーポレートガバナンス、リスク管理、およびコンプライアンスに関わる活動全体でデータを同期することで、企業は事業をより効率的に展開し、不確かな状況を切り抜け、誠実に行動することができます。

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GRC ソフトウェアは、企業が資本の可用性と関連リスクを監視、管理するのに役立ちます。

デジタル財務変革と新しいテクノロジー

クラウド拡張アナリティクスロボティックプロセスオートメーション (RPA)、人工知能 (AI)ブロックチェーンなどのデジタルテクノロジーを財務プロセスに適用することに関していえば、ほとんどの企業がいまだ初期段階という状況です。しかし、そうした企業は大きな転換期を迎えており、プレッシャーを受けています。迅速な意思決定のためのサポート提供について CFO とそのチームに対する期待が高まっているだけでなく、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミックから手痛い教訓を得たことで、各リーダーは財務変革と新しいテクノロジーを導入せざるをえない状況にあります。

 

理由は明快です。デジタルによる財務変革で得られるメリット(インスタントインテリジェンス、高精度の予測モデリング、プロセスの俊敏性の向上と自動化など)は、企業が変化を乗り切り、ニューノーマルに適応するために欠かせないものだからです。特に AI は財務変革の原動力であり、決算処理、リスク管理、コンプライアンスなどを含むすべてのプロセス、および財務アナリティクスや自動化に革命的な変革をもたらします。

今後 10 年で、財務活動はほぼ全面的に AI によって最適化されるか、または大きく刷新されるだろう。
  • クラウドでの財務管理:クラウドベースの ERP 財務管理では、拡張性とコスト効率が上がり、より多くのビッグデータのソースに接続できるようになるほか、どこからでも安全にシステムにアクセスできます。多くの従業員がリモートワークを行っている今、これは特に重要です。クラウドは、AI、機械学習、ブロックチェーンなどの新しいインテリジェントテクノロジーへのゲートウェイであり、前提条件でもあります。

  • 高度な財務アナリティクス:AI と機械学習を活用した財務アナリティクスでは、(組織内外の)大量の構造化データと非構造化データをほぼリアルタイムでマイニングできます。こうしたアナリティクスのおかげで、財務担当者は、より正確な予測を行い、計画を立て、将来のシナリオをモデル化して潜在的な意思決定事項が財務に及ぼす影響を把握し、オンデマンドレポートを生成してリスクと機会を予測できます。最終的には、高度な財務アナリティクスを使用してビジネスを正しい方向に導き、長期的なサステナビリティを確保することができます。

  • 財務の自動化:経理財務担当者の 90% が、財務レポート、決算処理、納税申告書の作成、給与計算などすべての作業を自動化するために、近いうちに RPA と AI を組み合わせて使用する予定です。RPA ボットは、反復タスクを自動化して、担当者がより価値の高い作業に集中できるようにするだけではありません。より多くの作業を短期間で完了し、コストとエラーを最小限に抑え、ワークフローを最適化し、ヒューマンボットチーム全体で作業を調整することもできます。

  • ブロックチェーン:財務において、ブロックチェーンテクノロジーは、透明性、効率性、セキュリティを新たなレベルに引き上げます。例えば、財務チームはブロックチェーンを使用して、常に最新状態の、照合を必要としない絶対不変の単一元帳を作成することができます。また、ブロックチェーンベースのスマートコントラクト(あらかじめ決められた条件が満たされると自動的に締結される契約)を使用すると、支払処理や法規制遵守などの作業を自動化して迅速化することもできます。

#1

財務リーダーにとって 2020 年の最優先事項は高度な財務アナリティクス

80

%

RPA を導入済み、または導入を計画している財務リーダーの割合

最高クラスのクラウドベースの財務管理システムには、高度なアナリティクス、AI、機械学習、ブロックチェーンなどのインテリジェントテクノロジーが直接ツールに組み込まれ、財務変革が劇的に高速化され、価値実現と ROI 達成までの時間が短縮されます。

財務管理に関する FAQ(よくある質問)

会計は、財務管理システムの必須コンポーネントの一つです。会計システムは企業の記帳要件をサポートするもので、この要件には総勘定元帳 (GL) や、GL に直接データをフィードする会計アプリ(債務管理、債権管理、給与計算など)があります。財務管理システムには、財務・資金管理、原価計算、戦略的計画、アナリティクスと財務予測、ガバナンスなど、組織の財務に関するあらゆる側面を管理するためのツールが含まれています。

エンタープライズリソースプランニング (ERP) は、ビジネスで必要とされる幅広い機能に対処できるよう設計された、ビジネス管理ソフトウェアの統合スイートです。会計、レポーティング、財務・資金管理などの財務アプリケーションは、ERP スイートの主要部分であり、財務プロセスの管理を改善したいと考えている企業にとって最適な出発点になります。

債権管理 (AR) は入金を管理するビジネス機能で、通常、購入に対して取引先から支払われるべき金額であり、支払期限を設けて取引先に掛け売りした金額を管理します。債権管理は請求から始まり、回収を管理し、売掛金、未収金、支払い履歴を記録します。

債務管理 (AP) は、サプライヤー、下請け業者、金融業者、その他の外部関係者に支払うべき金額を追跡、管理するビジネス機能です。債務 (借方) は通常、購買請求書の承認で始まり、支払いをもって終了します。債務管理では、債務額と債権者、買掛金の経過期間、支払額、現金要件を追跡します。

収益管理の目的は、需要と消費者行動を正確に予測し、製品、価格、プロモーション、配置(納品)を最適化して収益を増やし、最適な財務結果を達成することです。

債権管理プロセスの一部である売掛金管理とは、主に回収プロセス(会社に支払い義務のある人とのやりとり)、および支払いを確保するために行う回収作業を指します。

照合とは、差異を特定して正しいものを判別し、レコードを同期させるために、2 つ以上のソースまたはリポジトリーでレコードを突き合わせるプロセスのことです。例えば、総勘定元帳の記載内容を伝票と照らし合わせたり、銀行記録を受領金額や支払金額と突き合せたりします。

一般的に、会計システムは、ビジネスのお金の出入りを記録するために使用される仕組みです。会計システムという用語は、財務活動を追跡する一連のソフトウェアアプリケーションを指すことが多いです。会計システムの基本的な機能や ERP 財務ソフトウェアモジュールには、総勘定元帳、債務管理、債権管理が含まれます。オプション機能には、給与計算、資金管理、与信と回収などがあります。

財務計画・分析は、計画、予測、予算編成、および分析に関わる一連の活動で、会社の全体的な財務健全性をサポートします。FP&A ツールを活用すると、財務チームは、経営幹部によるスピーディな意思決定のサポート、詳細な財務モデルの構築と予測の実行、複数シナリオに対するプランニング、新しい収益機会の特定と評価などを行えます。

キャッシュフローは、ビジネスの現金の移動のことをいいます。販売で発生した現金は、原材料、給与、ローン返済などの経費の支払いにあてられるまで、銀行口座に預けられたり、その他の流動的な投資に回されたりします。キャッシュフロー計算書は、3 つある基本的な財務報告書(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)の一つで、会計年度内の組織の現金の推移(期首残高、収入、支出、期末残高)を記録するものです。

資金管理は、資金を回収し、キャッシュフローを管理するプロセスです。資金管理では、銀行口座と投資口座に預ける現金を中心に、資金の投資先と、運転資本、投資、現金準備金などさまざまな使途への割り当て方法を決めます。

資金管理と同様、財務/資金管理は、流動性を維持し、資金を最大限に活用して会社の業績を最適化することを目的として、運転資本に重点を置いて組織内の資金を管理することです。

経費レポートは、事業支出を追跡して使途が記載されたフォームです。通常、会社の施設から離れた場所で職務を遂行する従業員は、その活動中に発生したすべての経費(交通費、宿泊費、食事代など)を報告する必要があります。経費は会社の資金から直接支払われるか、個人が立て替えた場合には報告後に経費精算されます。

従業員は、個人の資金を使って業務関連のモノやサービスの支払いを行った場合、会社にそうした支出を報告して会社から払い戻しを受けられるようにします。これは、営業や訪問、会議、機器の設置や修理などを目的とした出張期間中に発生する出張費に対する一般的な精算方法です。また、通常の購買チャネルを経ずに購入したほうが早い場合、プロジェクトの完了に必要な消耗品や必需品に適用することもできます。

T&E は、出張と経費を表します。出張した従業員は、会社の T&E レポート(紙または電子)を使用して、交通費、宿泊費、食事代などについて負担した経費を報告します。経費は会社が直接支払う場合、または従業員が立て替えた後、報告して払い戻しを受ける場合があります。

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ERP で財務プロセスを実行

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