
戦略的要員計画の策定:スキルギャップに対処するための指針
人事担当者以外の者には、「要員戦略」という用語はショックを和らげる遠回しの言い方で、その裏には必死の採用活動や厳しい人員削減という目的が隠れているように聞こえるでしょう。もちろん、そのどちらでもありません。また、戦略的な要員を理解することの重要性は、新型コロナウイルス (COVID-19) のパンデミックに直面したことでますます高まりました。
企業が市場の原理や動向の変化に迅速かつ正確に対応するためには、組織構造を継続的に検討する以外に道はありません。そのことを人事担当者と従業員がともに理解することが極めて重要です。それが組織の競争力に大きく影響するからです。
それは、採用活動、従業員のデジタルスキルのトレーニング、またタレントマネジメントの新しいアプローチを意味するかもしれません。いや、おそらくそれら 3 つすべての組み合わせ、あるいはそれ以上のことを意味するでしょう。しかし、これらは本来、賢明で効果的な戦略と計画の戦術的な成果として、望ましくは取締役会レベルからトップダウンでもたらされるべきものです。
チェスなどの戦略ゲームと同様、プレイヤーの勝利への構想を実現する一連の手順や万能な解決策はありませんが、局面が変化する中で、戦術の組み合わせを入れ替えたり変更したりすることはあります。人事の場合、スキル評価、内部調達、外部調達、およびリーダーシップ育成を、1 つの主要な戦略的目標の下で組み合わせることを意味します。
問題は、どこから始めて、どのような要素を考慮すべきかということです。テクノロジーは役に立ちますか?スキルやリソースのギャップを埋めるために、役割を一時的に追加することはできますか?多様性を考慮に入れるべきですか?要員戦略の策定を開始する適切な時期はいつですか?
戦略的要員計画のためのヒント
企業の形態や規模により要員戦略はさまざまですが、最終的に目指すところは同じです。つまり短期および長期のビジネス課題と目標に迅速かつ容易に対処できるように、スマートさ、戦略性、俊敏性を身に付けるということです。戦術ソリューションは、組織再編、採用、再教育、組織的な人員削減 (RIF)、あるいはそれらすべての組み合わせなどのシナリオによってさまざまです。しかし、目標は、どのような状況下でも成功を収めるために、常に企業の戦略転換の準備を整えることです。以下の 5 つのヒントは、総合的な要員戦略を策定するための出発点です。
1. ビジネス目標から始めて、事前に計画する。
パンデミックのない平時の状況であっても、人事リーダーは、ビジネスの目的が何で、「人事」の「人」の部分がそのどこに役立つかをはっきりと把握することから始めるべきです。まず、企業の現在の戦略目標を達成するのに役立つ適切なスキルについて、誰がそれを保持し、それらのスキルが十分に供給可能かを判断し、そのスキルを持つ人材を今後どのように容易に再配置できるかを検討することから始めます。自動化やその他のコスト削減ソリューションを組み込むことで、ビジネス目標の本質的な部分が変化する可能性が高い場合、それらの目標に沿って採用、トレーニング、再編成するための戦略を立てましょう。戦略を定期的に見直して、常に現在の視界の先を見据えていることを確かめてください。
2. 1 人だけで解決しようとしない。
要員戦略(およびさまざまなビジネスシナリオの緊急時対応)の計画は、以前からハードな仕事でした。新型コロナウイルス (COVID-19) に襲われる前から、企業は、競争圧力の高まりと業務のデジタル化ニーズに直面し、スキルギャップの解消に悪戦苦闘していました。企業は、これまでにないスピードで戦略変更を行う必要があります。このため、新しく必要とされるスキルを持つ貴重な人材を求めて競争している企業もあれば、突然の余剰人材に対処している企業もあります。
今日、経済環境や市場動向は日々変化を続けています。そのスピードは、規模の大小を問わず、あらゆる人事組織がその変化に対して効果的に計画を立てるよりも速くなっています。したがって、この状況に対する最善策は、スキルデータをリアルタイムに可視化して、現在および長期的な財務的影響を評価しながら、組織図の複雑な構造と依存関係を柔軟かつ容易に操作できるテクノロジーを、人事マネージャーが活用することです。これらの機能は、以前は異なるエンタープライズソフトウェアシステムに分散していましたが、現在は簡単に統合できるようになりました。使用するテクノロジーツールが何であれ、必要な情報の獲得に苦労するのではなく、戦略とビジョンの策定にエネルギーを注げるようなツールを見つけてください。
3. 多様性を最も重要な検討要素とする。
いくつもの要員戦略の計画を練るときには、多様性を検討の中心に置いてください。たとえ他の優先事項の圧力でその優先度が下げられる恐れがあるときでも、そうしてください。長期的に見れば、それが企業のカルチャーと最終的な収益に対してもたらすメリットは、無視できないほど大きなものです。現行リソースの活用と最適化を検討している企業にとって、スキルだけがビジネス上重要な考慮事項ではありません。これまでのデータが決定的な事実を示しています。すなわち、多様な人材の保持に全力を傾ける企業は、その形態と規模によらず、より良いビジネス成果を生んでいます。
多様な人材の保持に全力を傾ける企業は、その形態と規模によらず、より良いビジネス成果を生んでいます。
4. 社内に目を向ける:従業員の能力開発と後継者計画。
従業員を維持する方が新たに採用するよりも安上りであると以前から考えられてきましたが、それは単純化し過ぎた考え方です。要員戦略の策定計画によって特定されたスキルギャップを埋めるためには、新たな従業員を採用することが最善で唯一の選択肢である場合や状況もあります。ギグエコノミーの台頭により、採用は、特に短期的なニーズに対して従来よりも経済的な選択肢になりました。しかし、長期的なビジネス目標とそれを達成するためのスキル開発に関しては、従業員とリーダーシップの育成を通じた後継者計画の観点から考えてください。特に労働市場や人材プールが逼迫している中では、ほとんどの従業員が、会社が激動の時代を乗り切るために役立つだけでなく、自らのスキルを高める機会を望むでしょう。
人事リーダーは、要員戦略を策定するに当たり、戦略を実行する主な原動力となる関係者として、既存の従業員を擁護するべきです。また、リモートワークの時代において特に困難なタスクである、企業文化の維持のために、既存の従業員を維持し、再訓練する能力も軽視しないでください。
5. 学習カルチャーを醸成し、従業員に推進させる:スキル向上と再教育。
誰を採用、解雇、再教育するかという点では、人事が全権を握っているかもしれませんが、成功や失敗に最も近く、どのような新しいスキルが必要か、また社内の誰がそのスキルを身に付けて新しい課題に対処できるかを一番よく分かっているのは、日々会社業務を行っている従業員です。そのため、要員戦略を実行する中でスキルギャップが見つかったときには、従業員にその詳細について情報を提供してもらうことが重要です。つまり、学習の環境を育てることは、必ずしもトップダウンの取り組みではありません。学習するカルチャーを生み出し、従業員に自らが希望し開発する必要があるスキルを特定させるのが人事部門の役割です。これにより、トレーニングは、一瞬で終わってしまう必要に迫られたプロジェクトではなく、常に利用できる、企業に深く根付いたカルチャーの一部になります。これは、長期的には、目立ったスキルギャップが少なくなることを意味します。また、従業員が個々の学習への取り組みを推進できるようにする場合には、継続的な学習を促進し、各自のスケジュールや学習スタイルに合わせたやり方でアクセスできるようにする人事ツールを使用することで、投資効果を最大化できます。
再教育とスキル向上への取り組みは、包括的な要員戦略を伴わなければ、組織に与える影響とメリットがはるかに小さくなります。同様に、スキルギャップに対処するための最善の方法はもちろん、短期的および長期的なビジネス目標も考慮せずに、人員の入れ替えのためだけに要員戦略を使うのであれば、それを策定する意味はほとんどありません。
これらのヒントすべてが、人事機能の再考や見直しのように聞こえるとすれば、それはそのとおりだからです。そして、それがこれまで以上に必要とされているからです。特に、ビジネスが変化し、自動化などのコスト削減イノベーションが適用される際に、スキル向上、後継者計画、多様性を重要な要素として要員戦略の策定に取り組む人事担当者は、組織の長期的な安定と成長の推進者になります。そして、人事担当者がこのように自らの仕事を作り直すことに勇敢に立ち向かえば、経営幹部や一般社員も刺激を受け、よりすばやく人事担当者に続くでしょう。