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光の縞

未来都市の創造

活気に満ちた都市環境の実現は市民、企業、大学の連携にかかっています

2017 年、ボストン市のスマートシティ計画・開発の取り組みは岐路に立っていました。それまでの数年間、同市はデータやアナリティクスを利用して市の運営を合理化するための数々の取り組みを行い、大きな成果を上げてきました。そして今、市当局は次の目標として、テクノロジーによって市民のための新しいサービスまたはより良いサービスを提供できる可能性に注目し始めました。

ボストン市は、技術者、科学者、研究者、ジャーナリスト、スマートシティ活動家に、市民を惹きつけるアイデアを提案するよう要請しました。

Boston Smart City Playbook では次のように記述されています。「市役所内の業務を楽にしてくれるテクノロジーは大歓迎です。市民が抱える問題を解決してくれるのならなおいいです。」

全体的に見れば、スマートシティの取り組みに問題はないのですが、これまでのところ、大きな成果は出ていません。物理空間または社会空間として市が市民と対話したり、都市生活を大きく変える、持続可能で再現可能なソリューションはほとんど出現していません。ボストン市が行った実態調査や招集は、デジタルディスラプターに遅れを取らないよう頑張っている地元の事業者、渋滞に辟易している通勤サラリーマン、無計画な開発、手頃な家賃、環境保持のことが気になっている住民、街の治安を心配している一般市民へと視点を移したのは良いスタートでした。しかし、市役所内外のスマートシティ提唱者たちは気付いたのです。その都市で生活し、働き、娯楽を求める数百万の市民の参画という重要な要素が欠けていることに。

企業がその未来にカスタマーエクスペリエンスが不可欠であることを認めているのと同様、市当局も市民とともに、即応性の高い、パーソナライズされた都市エクスペリエンスを開発する必要があります。オランダの小都市、スヘルトーヘンボスの都市開発担当コンサルタントであり元シニアストラテジストのハラルド・ワウテルス (Harald Wouters) 氏は次のように述べています。「スヘルトーヘンボス市民は、自分たちのために最新テクノロジーを活用してほしいと考えています。新たなデジタルの波に乗らなければ、自治体は市民とのつながりを完全に失ってしまうでしょう。」

市当局は、市民や企業(特にテクノロジー企業)がアイデアを出してくれるのをいつものように待つのではなく、未来に近づくための積極的なアプローチを取る必要があります。企業がそのビジネス形態を、完成品の提供から、顧客自身がその製品やサービスの開発に関わり、実際に使用してみたり、関連データにアクセスしたり、互いに直接やり取りして独自の価値を生み出すオープンプラットフォームの提供へとシフトしているのと同様、市当局も、全住民の情報を収集し、その情報を活用して、その地で生活し、働き、事業を運営する新しい方法を共同設計するためのプラットフォームが必要になるでしょう。市当局は、市民が受け取る対価を把握する必要があります。スピーディな手続き、パーソナライズされたエクスペリエンス、インクルージョン、コミュニティのつながりといった形で市民に価値を提供する必要があります。

これらのシフトを実現できない都市は、市民の信頼を失うだけでなく、都市変革から得られる潜在的な利益を逃すことになります。

住民の声を聞く(データを収集する)

スマートシティは、市民が旅行したり、仕事をしたり、買い物をしたり、遊ぶときのパターンを感知し、それに応えます。今のところ、インフラ、住民、および活動に関するリアルタイムデータなしにこれを実現できるスマートシティはありません。アトランタ都市圏高速交通局の CIO で、かつてアトランタ市スマートシティ担当副 CIO 兼エグゼクティブディレクターを務めていたカーク・タルボット (Kirk Talbott) 氏は次のように述べています。「都市は過去 200 年間、水路や電車といったインフラや、働き口を提供することで繁栄しましたが、来たる 100 年間は、精度の高い情報が表舞台に上がることでしょう。良い情報を利用できるかどうかは、将来の成功の重要な決め手の一つになります。」

 
市民は、例えば、Google や Amazon が予測モデリングを利用してユーザーが何を書きたいのか、何を購入したいのか予測することができるのに、なぜ地方自治体は先を見越して道の穴を補修できないのかと考えています。市民エンゲージメントと市民アナリティクス用のプラットフォームやモバイルアプリケーションの開発を支援する Citibeats 社の CEO、イヴァン・カバレロ (Ivan Caballero) 氏は次のように述べています。「これまで都市は市民を十分に尊重せずに成長してきました。そして今、市民はさらに多くのことを求めるようになっています。」
 
カバレロ氏や他のスマートシティ提唱者によれば、「さらに多くのこと」とは、新しい近隣開発の計画について積極的に意見を投稿することや、交通信号管理用に車両位置データを受動的に提供することなど、市民がデータを活用して自分の利益になる環境を構築できることを意味します。オーストラリア、フランス、ドイツ、シンガポール、英国、米国の 6,000 人以上の市民を対象とした調査によると、圧倒的多数の人が公共サービスのデジタル化、パーソナライゼーションの強化、簡単で安全な方法によるデータの共有とアクセスを望んでいます。また、この結果は、デジタル化に対する潜在的な貢献意欲も示唆しています。例えば、42% の人が IoT デバイスを積極的に使用して割引やサービスの改善と引き換えに個人データを共有すると回答し、45% の人がフォーカスグループや委員会に積極的に参加して自分が利用しているサービスを改善したいと回答しました。
 
しかし、大部分の都市は市民をスマートシティの取り組みに関わらせる方法を模索していませんでした。2018 年の「Business & Information Systems Engineering」ジャーナルに掲載された記事の中で、ある研究チームが次のように述べています。「スマートシティ開発における市民の重要な役割は十分に研究されていません。市民を適切に関わらせていないか、スマートシティの取り組みが市民に与える影響が考慮されていないため、スマートシティはその目的を達成できないでしょう。」
ただし、仮想現実 (VR) や人工知能 (AI) などの新しいテクノロジーとさまざまな新しいデータソースを利用して市民を参画させる方法を検証しているスマートシティ実験はいくつかあります。
  • オランダでは、新しい法律により、市民は初期段階から都市開発に関与することが義務付けられています。オランダ政府の Web サイトでは、「do-ocracy」と呼ばれるコンセプトが説明されています。このコンセプトは、市民が「万人向けの標準的なソリューション」を受け入れず、「市民とともに考える当局」と関わることを望んでいると仮定したものです。スヘルトーヘンボス市で、ワウテルス氏のチームが複合現実による実験を行いました。「私たちは、風車や新しい高層ビルを開発する場合、住民のニーズや懸念をより的確に把握するために、その建造物がどのように見えるか、またはどのように感じられるかを住民に確かめてもらう方法を模索します。住民は、バーチャルで近隣を歩きまわったり、新しい開発地を自転車で通り抜けたりして、変化を体験することができます」と、ワウテルス氏は説明します。そして、スヘルトーヘンボス市は調査や対面ミーティングからフィードバックを収集しています。
  • Citibeats 社は、世界中の自治体と協力して、市民が何を望んでいるかを的確に把握するため、市民を問題解決に直接参画させてきました。Citibeats 社のプラットフォームは、AI を使用して、ソーシャルメディア、市民ヘルプラインや公聴会のレコード、チャットボットなどの複数のソースから収集されたテキストを分析し、地域住民の最大の懸念事項を特定、分類、統合します。2017 年、Citibeats プラットフォームは、スペインのバルセロナ市の最大の問題点をモバイル対応の低さだと特定しました。これをきっかけに、バルセロナ市は、この問題の解決に関与するために個人がダウンロードできるモバイルアプリを開発しました。このアプリは、ユーザーが選択したルートに交通渋滞があるかどうかを知らせ、タクシー以外の推奨される公共交通機関を示し、交通渋滞緩和に貢献した割合に応じて、地元企業で使えるポイントを提供します(交通渋滞の程度が激しいほど、公共交通機関を利用したことでもらえるポイントは増えます)。
  • ニュージーランドでは、クライストチャーチ市、オークランド市、ウェリントン市の市議会が、3 都市間および世界中のパートナー企業との間でデータと調査結果を共有し、市民中心の多くのプロジェクトの試験運用と導入を行ってきました。クライストチャーチ市は 46 のサービスの提供方法を変え、38 万人の市民向けに市との対話用アプリや Web サイトなどを用意しました。オークランド市は、レクリエーション水域の状態を監視するセンサーを設置してリアルタイムで安全警報や水質情報を市民に提供しています。さらに公共交通機関や交通渋滞に関するリアルタイムデータも提供していいます。一方、首都のウェリントン市は、バーチャルリアリティ・キャピタルシティを導入し、市民が市のデータに触れて、市が直面する問題や市の将来に向けた構想を理解できるようにしました。
  • McKinsey Global Institute の 2018 年 6 月のレポートによれば、コロンビアのメデジン市は、スマートシティプロジェクトの数ではいくつかの中南米の都市に遅れをとっていますが、市民へのプロジェクトの定着率では他をリードしています。Medellín Ciudad Inteligente は自治体、地元の大学、社会組織と協力して、公開データ、透明性の高いガバナンス、市民参画、イノベーション、個人とコミュニティ間のコラボレーションを促進しています。メデジン市は、ボトムアップ方式の都市再生に重点を置いており、クラウドソーシングを利用して、市の最も脆弱な地区の市民をケーブルカー、エスカレーター、テクノロジー対応の学校や図書館などの変革プロジェクトに従事させました。市の MiMedellin ポータルは、市民が大気環境や公共交通機関などのさまざまな問題の解決策について意見したり、解決策に賛成票を投じたりするための方法を提供しています。
 
韓国のソウル市は、テクノロジーの活用により、自治体の優先事項決定への市民参画が最も進んだ主要都市です。市民は、市が提供する mVoting スマートフォンアプリで、公共図書館、新しいバス路線、禁煙政策、学校のカリキュラムの改善などの自治体の政策提言(地域または人気度で検索できる)をレビューしたり、市民独自の政策提言を提案したり、成立を希望する政策に賛成票を投じるといったことができます。この取り組みは、公式の投票プロセスではありませんが、政策当局者の意思決定に役立っています。これまでに数百件の政策提言が行われています。
 
Gartner Research 社のバイスプレジデント、ベッティーナ・トラッツライアン (Bettina Tratz-Ryan) 氏によると、ソウル市は、テクノロジー/インフラベースのトップダウン方式の取り組みではなく、都市エクスペリエンスの設計と開発に住民を参画させる地域主導のボトムアップ方式のアプローチによって、異なるスマートシティのモデルとして頭角を現しています。しかし、「 Journal of Strategy and Management」に掲載されたパリ・スクール・オブ・ビジネスのイグナシ・カプデビラ (Ignasi Capdevila) 氏とバルセロナ大学のマティアス I. サルレンガ (Matias I. Zarlenga) 氏による研究では、ほとんどの地域で「市民は、使用者、テスターまたは消費者と見なされるだけで、生産者であったり、創造性やイノベーションの源泉だとは考えられていない」との見解が示されています。
 
1 つの理由:都市デジタルイノベーションの最初の波は、そのほとんどが収益を目的とした民間企業により起こりました。大手ハイテク企業、スタートアップ企業、研究者はこぞって、スマートシティ市場における自らの優位性を主張するために声高に喧伝していました。その一方で、都市側では、ニーズに沿って自ら具体的な取り組みを計画したり、未来への明確なビジョンを立てることはほとんどありませんでした。
 
さらに、主流であったのは単発プロジェクトで、都市を発展させるような方法を再創造するといったスケールではなく、単発的な問題を解決するだけでした。
 
一方、プライバシーとデータ利用に関する市民の懸念を考慮に入れていないという理由で、市民から反発を食らった取り組みもありました。例えば、Google 社の親会社である Alphabet 社傘下の Sidewalk Labs 社との契約の下で進められたウォーターフロント地区の Quayside 開発は、個人情報の取り扱いについて懸念を抱いたトロント市民から中止を求めるオンラインキャンペーンが起きました。
 
同様の懸念から、いくつかの自治体においては市民のデジタル権利を定めています。2018 年 6 月、アムステルダム市の副市長トゥリア・メリアニ (Touria Meliani) 氏は、市がデジタルインフラに統合する予定の都市の公共空間でセンサーやデータを利用する際の、価値や規範を示すデジタル都市政策の枠組み構築をリードしました。これらの原則では、データの収集、可用性、プライバシーのほか、WiFi 追跡の禁止が取り上げられています。これらは Amsterdam Economic Board (アムステル経済委員会) が地域住民と協力して策定した、スマートシティのデータの収集と利用における透明性、説明責任、倫理を求めるマニフェストに基づいています。アムステルダム市はまた、機械学習アルゴリズムが特権層地区やその問題に偏らないようにするための中立的な監査など、市やテクノロジープロバイダーにデータ利用に対する説明責任を持たせるその他の解決策も探っています
 
市民は、使用者、テスターまたは消費者と見なされるだけで、生産者であったり、創造性やイノベーションの源泉だとはほとんど考えられていない。
イグナシ・カプレビラ氏(パリ・スクール・オブ・ビジネス)およびマティアス I. サルレンガ氏(バルセロナ大学)、「Journal of Strategy and Management」

プラットフォームとしての都市

市民のニーズを的確に把握し、そのニーズの解決に市民を参画させる個々のプロジェクトが、最初のステップになります。しかし最終的には、都市は視点をより大きく持つ必要があります。そのため、市民が都市エクスペリエンスの開発に参加できるようにするプラットフォームを提供する必要があります。

民間企業は、顧客が製品やサービスの設計、生産、またはマーケティングに直接貢献できたり、企業が製品やサービスの開発のために自身のデータを利用することに顧客が合意できるようにするオープンプラットフォームを構築しています。プラットフォームビジネスモデルは、2 つ以上のグループ(通常は生産者と消費者)の情報交換をサポートすることで、価値を生み出します。プラットフォームは、このような交流を大規模にネットワーク化できる構造、規格、プロトコルを提供します。例えばフィットネスの分野では、自己ベストやクラウドソーシングされたルート、勝利者を選ぶ大会など、ユーザーがデータを通じてつながりを感じられるアプリを開発者が作成するためのプラットフォームを提供している企業があります。また、顧客が自分たちのメリットのためにデジタルトライブを編成して、ソリューションを提供することもあります。

都市当局の場合、スマートシティ提唱者は、市民、企業、大学研究者などが共同でイノベーションを進め、都市問題を解決できるエコシステムが確立する、とのビジョンを描いています。電話通信会社の業界団体である TM Forum は、その「City as a Platform Manifesto」の中で、「都市とその住民にメリットをもたらすサステナビリティ、インクルーション、およびターゲットを絞ったイノベーションの、目標とする成果を実現するための、住民、公共セクター、民間セクター間のコラボレーティブな共有フレームワーク」がそのコンセプトだと示されています。商業プラットフォームの原則を都市環境に合わせることで、都市はイノベーションハブとなり、都市生活上の課題を管理し、都市生活のクオリティを向上させるためのアイデアを生み出すことができます。

例えば、フィンランドのタンペレ市は、選択されたテーマ(健康とウェルビーイング、顧客サービス、安全とセキュリティ、スマートモビリティなど)を中心にプラットフォームを構築し、企業、大学などが、市とその住民のためにデジタルソリューションを実験できる基盤を構築しています。このプラットフォームは、アジャイル開発とプロジェクト管理、ハッカソン、オープンイノベーションアプローチなど、民間セクターでよく見られる複数の共同創造アプローチを採用しています。これにより、企業、大学の研究者、および市のリーダーたちが将来の IoT モデルを共同で定義できるようになりました(「イノベーションラボとしてのシカゴのストリート」を参照)。

1 つのプラットフォームが、公開データに基づいたタンペレ市のデジタル 3D モデルを提供しています。このモデルは、企業や住民が自由にアクセスでき、市の新しい路面電車や Hiedanranta と呼ばれる計画済みの湖畔地区といった都市開発アイデアを紹介するために使用できます。「ユーザーは、自分の近所や勤務地に関連する開発を調べることができるため、市民が都市計画に貢献しやすくなります」と市当局は語っています。タンペレ市は、他のセンサーやアプリと統合できる IoT プラットフォーム(市の街灯ネットワークに組み込まれる)も構築中です。企業や研究者はここで新しいプロジェクトや製品を試すことができます。

 

イノベーションラボとしてのシカゴのストリート

CaaP (City-as-a-Platform) アプローチを使用して、市民を中心に据えてさまざまな都市問題に取り組むことができます。米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所のシニアコンピューターサイエンティストであり、シカゴ大学 Mansueto Institute for Urban Innovation の上級研究員であるチャーリー・キャトレット (Charlie Catlett) 氏は次のように語っています。「市が都市インフラに埋め込みたいと考えるアイデアを試すのに適した場所はあまりありません。市が直面している課題について市と話し合った結果、柔軟でプログラミング可能な測定機能が不可欠であることが明らかになりました。」

シカゴ市では Array of Things (AoT) が進められています。キャトレット氏が率いるこのプロジェクトを、市のフィットネストラッカーと呼ぶ人もいます。センサーは、光、空気、表面温度、振動、大気圧、音響強度、通行人の往来、車両交通(センサーとともに配備された AI を使用)に関するデータを収集します。このネットワークは、市の都市計画やサステナビリティを改善するツールとしてだけでなく、住民やコミュニティにおける日常生活のクオリティも向上させるツールとして構想されています。

最初のノード(センサーユニットのこと)が 2016 年に本稼動を始めたとき、シカゴの元 CIO ブレンナ・バーマン (Brenna Berman) 氏は次のように述べています。「成功すれば、5 年後、このデータと、データから生まれるアプリケーションやツールが、住民の生活に関わり、新しいサービスや政策に組み込まれるようになります。センサーは公益設備と見なされるでしょう。街灯やバスがそうであるように。センサ―は、私たちがさまざまな街の問題に対応できるように設置されます。」

AoT の背後にいるチームは、幅広いコラボレーションの可能性を示唆しています。アルゴンヌ国立研究所とシカゴ大学の研究者たちは、世界のさまざまな大学のパーナーたちとともに「Waggle Platform」(ミツバチが巣の仲間たちに食料の場所を伝えるために踊るダンスにちなんだ名称)を開発しています。また、Microsoft、Cisco、Intel、Schneider Electric、Motorola Solutions など、大手テクノロジー企業からもサポートを受けています。シカゴ運輸局は、街中の街灯にノードを設置し、データポータルを管理することで AoT データを公開する役割を担っています。イノベーション・テクノロジー部門 (Department of Innovation and Technology) は、利用可能な AoT データを他のシカゴデータと統合し、これらのデータを一般市民に公開できるようにデータポータルを管理しています。

最初のノードの一部はシカゴ市のピルゼン地区に設置されました。そこではぜんそくが蔓延しており、地域の診療所はより多くのデータを切望していました。民間企業や非営利団体は、データを利用して革新的なアプリケーションを開発することを考えています。例えば、住民が特定の大気汚染物質への被曝を追跡したり、過度の混雑や騒音がある地区を避けたり、最も緑が多い経路を通ったりしながら街を移動できるモバイルアプリです。2018 年、データアクセス用 API がチュートリアルやマニュアルとともにリリースされ、開発者が AoT によって収集されたほぼリアルタイムのデータをアプリケーション用に使用できるようになりました。市は、このデータを他の公開データに統合し、科学者からアプリ開発者、一般の人まで、誰もが利用でき、誰にとっても使いやすいインターフェースを提供する計画を立てています。

現在は、100 を超える AoT ノードが設置され、2019 年の夏の終わりまでに合計で 200 まで拡大する計画です。プロジェクトリーダーは、住民との関係を築いたり、地域ごとに異なるコミュニティの優先事項を特定するためにミーティングやワークショップを開催しています。また、住民やコミュニティグループ側から、プロジェクトの Web サイトを通じて、特定の場所にノードを設置するよう要求することもできます。

前進のための 4 ステップ

スマートシティプラットフォームは手段であって、目的ではありません。スマートシティプラットフォームは、市民と連携し、さらに市民ニーズに対応できる企業や研究者の参加も可能にしながら、市民の最も切迫したニーズを解決するためにデータや情報の交換を行うといった、大きな変革を起こすものです。

相互運用可能で、すべての要素を統合した、非常に魅力的なプラットフォームは進化に何年もかかるため、市当局は段階的アプローチを取る必要があります。「当市の場合、現行のユースケースを統合して、ボトムアップ方式で始めています」とワウテルス氏は語ります。このプラットフォームがサポートする市民中心の未来に向けて、よりインテリジェントなプラットフォームへと移行していくために、市のリーダーたちが今すぐできるアクションは次のとおりです。

  • 解決策からではなく、問題から始める。 「どのような問題を解決したいか、どのような情報を知りたいかを明確にしましょう」と、タルボット氏は教えてくれます。同じ都市は 2 つとありません。例えば、バルセロナ市では、モバイル対応、水消費量、教育が最優先事項です。そこから列車で西に 3 時間のマドリード市では、地球温暖化関連の問題に関心がある住民が多いとカバレロ氏は話します。
  • 既存のデータを収集する。 解決すべき問題に優先順位を付けたら、都市がすでに手にしている関連データを探します。「都市には、すでに定期的に収集されているペタバイト単位のデータがあります」とタルボット氏は語ります。既存の情報を統合して分析し、新しい解決策を考え始めることができます。
  • 民間企業や大学と連携する。 今後も、将来の都市ソリューションを収益化することに膨大な商業的関心が寄せられるでしょう。住民の生活の質と利益を守るために、市のリーダーたちは市民中心の解決策をサポートするパートナーシップの確立に積極的である必要があります。
  • デジタル原則またはデジタル権利を定義する。 テクノロジーは急速に進歩しており、プライバシーおよびデータ利用に関する現行法は市民の懸念に広く対応していません。都市は、一連のデジタル原則を定め、都市生活、都市計画、都市問題解決への市民のデジタル貢献に対して提供する見返りを明確にする必要があります。2018 年 11 月、ニューヨーク、アムステルダム、バルセロナでは、個人データを保護し、個人データの利用を促進する政策、ツール、およびリソースを作成するために、Cities Coalition for Digital Rights を共同で発足しました。
タルボット氏は次のように述べています。「リーダーは、これらの問題を解決するのに積極的な人々、つまり大学、シンクタンクに焦点をあて、将来がどのようになるべきかを見極めるためには少々実験を行う必要があると認識する必要があります。都市はただ傍観したり、リスクを避けたりしていることはできません。実際、それは間違いを犯すことを保証しているようなものなのです。」

よりスマートな未来へ

国連が提供する「2018 年の見通し」によると、2050 年までに世界人口の 68% が都市に居住することになります。経済発展、社会的共生、安全保障、サステナビリティ、インフラ、モビリティ、住宅、生活の質に関する課題は、都市部の成長とともに今後も増え続けるでしょう。都市は、これらの課題に対応するために真にスマートにならなければなりません。そうしなければ、都市が経済的に成長し続けることはないでしょう。都市が成長できなくなると、人々は去り、都市は衰退します。

影響力のあるジャーナリストであり都市計画提唱者でもあるジェーン・ジェイコブス (Jane Jacobs) 氏は、「都市にはあらゆる人に何かを供給する能力があります。ただし、それはあらゆる人によって何かが作られている場合に限られます」と語っています。初期のスマートシティの取り組みで、市民や市職員はデジタル時代のスマートシティの可能性をはっきりと意識するようになりました。

AI、ビッグデータ分析、IoT テクノロジーなどの新機能の登場は、自治体が多くの難問を解決できるよう、その支援を約束するものでした。これらのテクノロジーは、市の運営や意思決定への市民の参加も支援します。未来は、市民中心で都市運営を進める都市にこそ、輝く光を当てるのです。

著者について

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マイケル・ランダー (Michael Rander)
SAP Insights リサーチセンターのマーケティングディレクター兼リードアナリスト

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ステファニー・オーバビー (Stephanie Overby)
ビジネスとテクノロジーの融合に注目しているフリーライター兼編集者

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