AI 時代における、スマートな仕事を再設計するための 6 つの観点
AI は仕事のあり方を変えつつありますが、人間と AI が意図的にコラボレーションすることで、エンゲージメントの向上、よりスマートな業務の設計、長期的な価値創出を実現できます。
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今日、従業員やマネージャー、組織は、深まるギャップに直面しています。AI の活用領域が広がるにつれて仕事のあり方が変わりつつありますが、その変化は十分な連携や意図的な設計によるものではありません。問題は、AI に関する意欲の欠如ではありません。欠けているのは、AI を業務に組み込む上での明確な指針です。SAP の Future of Work Research Lab では、人間や AI にとってどのような仕事が本質的に適しているのか、AI をどのように活用すれば人間がより力を発揮できるようになるのか、さらに、その知見を仕事の再設計にどう活かせるかを明らかにするべく、調査を進めています。
現在、仕事はどのように変化しているのか
私たちは、世界中の 4,016 名の従業員およびマネージャーを対象にした最新調査により、過去 1 年間で仕事がどのように変化したのかを明らかにしました。調査結果によると、人間ならではの能力が求められる業務が増加しています。例えば、リーダーシップの発揮やマネジメント、監督業務(46% の回答者が増加を報告)、問題解決(45% の回答者が増加を報告)などです。およそ半数(45%)が、新しい情報やスキル、ツールなどを学習する時間が増えたと回答しています。その背景には、AI 活用の拡大があると考えられます。一方、頻度が減少しているタスクは、現在 AI が得意とする領域と一致しています。具体的には、定型的な事務作業(19% が減少を報告)、コンテンツ作成(17% が減少を報告)、データ分析やレポート作成(17% が減少を報告)などです。こうした変化には、さまざまな要因が影響していると考えられますが、回答者の 88% が、変化の要因は少なくとも AI 活用によるものと回答しています。
しかし、最も興味深いのは、誰がこの変化を主導したのか(そもそも主導した人がいたのか)という点です。過半数(51%)のケースでは、業務は明確な指針や可視性もなく変化しています。従業員の回答では、32% が組織やマネージャーからの指導ではなく自分たち自身の判断で仕事の進め方を変えたとし、18% が時間の経過につれて自然に変化したとしています。
つまり、仕事は目的をもって再設計されているのではなく、なりゆき任せで変わってきたということです。指針がないまま仕事のあり方が進化すれば、さまざまな問題が生じ始めます。組織やマネージャーは、従業員が何をしているのか、また、適切なツールで安全に業務を行っているのかを把握できなくなります。指針なしに自らの役割を再定義する従業員は、過重労働や燃え尽き症候群に陥ったり、自分が何を達成すべきかが分からなくなったりする可能性があります。一方、役割を再定義できない従業員は、取り残されてしまうかもしれません。
明確な意図を持って仕事を再設計する
では、組織はどのように仕事を意図的に再設計し、AI を組み込めばいいでしょうか?レポート「今後の展望:未来の働き方の見通しと可能性」で、私たちは 2 つのアプローチを明らかにしました。「AI マキシマリスト」と「共生戦略の推進者」です。
AI マキシマリストの信条は、「AI に できる ことは、AI にやらせる」というものです。役割の設計は、可能な限り自動化を進めた上で、残った仕事を人間に割り当てる形で進めます。このアプローチでは、効率と生産性が短期的に向上し、成果創出のスピードが加速し、規模が拡大する可能性があります。しかし、人間の貢献を単に「残った仕事」と捉えることは、不信感やモチベーションの低下を招き、やがては当初のメリットを打ち消すことになります。仕事を自動化可能なものにだけに限定することで、実現できるはずの価値を取り逃がし、人々を置き去りにしてしまいます。短期的には効率向上に見えていることも、長期的には、その価値が徐々に損なわれていきます。
共生戦略推進者のアプローチは、AI と人間の双方の可能性から導かれます。役割の設計では、人間と AI がそれぞれの強みを組み合わせ、単独では達成できない成果が得られることを目指します。これにより、AI がもたらす価値と、人間にとって仕事を有意義で意欲を高める要素の双方を最大化します。その結果、従業員のエンゲージメントが高まり、燃え尽き症候群に陥ることなく、まったく新しい形で組織のミッションに貢献できるようになります。このモデルでは、AI は人間の価値を置き換えるものではありません。むしろ、人間の価値を新たな形に転換し、拡大するものとなります。
それぞれの強みを生かしたタスク配分
カスタマーリサーチ担当 VP のジュリー・バルトリック (Julie Bartholic) と私は、人間と AI の双方にメリットをもたらす形で役割を再設計する方法について研究してきました。私たちは、有識者へのインタビューやワーキングセッションを通じて、仕事の再設計における 6 つのステップを開発しました。現在は複数の企業と提携し、実際の職務を対象にこのモデルの検証を進めています。この取り組みを通じて分かったことがあります。このプロセスで最も重要かつ複雑で、変化の大きいステップは、個々のタスクを見直し、それらを人間、AI、またはその両方のいずれに担わせるべきかを見極め、再配分することです。
タスクの見直しと再配分に対する共生戦略アプローチでは、「これは AI で可能か?」と問うのではなく、「人間と AI の強みやリスクを考慮し、この仕事は人間が行うべきか、AI が行うべきか、それとも両者が共同で行うべきか」と問います。こうした問いの転換こそが、仕事の再設計と再配分との違いを分けます。もちろん、答えは 1 つではなく、不変でもありません。AI の強みとリスクは絶えず変化しており、AI に任せること、任せるべきでないことに関する文化的な境界線も大きく異なります。この問題の解決で重要なのは、人間と AI の根本的な違いに関する複数の観点からタスクを評価することです。
- 判断ベースかルールベースか:人間が強みを発揮するのは、ニュアンスに富み、予測がつきにくく、あいまいなタスクです。一方、AI は、反復的で予測可能性が高く、例外がほとんど発生しないタスクで強みを発揮します。
- データ品質:AI が最も強みを発揮するのは、基盤となるデータが構造化され、ラベル付けされ、安定している場合です。一方、人間は、情報が不足していたり、矛盾していたり、コンテキストが欠けていたりする場合でも、すぐれた理解力を発揮できます。
- 感情に対する配慮:一般的に人は、感情的な要素を伴うタスクや、信頼関係の構築が求められるタスクに関しては、人間が担当することを好みます。
- リスク:人間は、ハイリスクなタスクで必要とされます。例えば、説明責任や説明可能性が求められるタスクや、法的リスクや安全面の問題、風評被害などを招く可能性のあるタスクです。一方、説明可能性の重要度が低く、ネガティブな影響が生じた場合でも軽微な不便にとどまる、あるいは修正可能な範囲に収まるようなタスクなら、AI が自律的に処理できます。
- 出力の規模:AI は、大量処理が必要なタスクや反復的なタスクでは、人間よりも優位です。
- 速度:人間は、熟考したり、課題に取り組んだり、上位者へ報告したりするための時間が確保できる場合に、AI を上回る成果を生み出せます。一方、AI は、リアルタイムに判断を下す必要がある場面で真価を発揮します。
これらの観点で評価することで、推測や経験則を設計へと転換できます。テクノロジー、戦略、カルチャーの進化に伴って、これらの観点に関連して企業が使用する基準やトレードオフも変化します。このリストには、依然として生産性につながる規模(5 番目)や、効率につながる速度(6 番目)が含まれていますが、これらは強みの観点を包括的に捉える観点の一部として位置付けられています。これにより、論点を「どこを効率化できるか」から「どこで強みを最大化できるか」へと捉え直すことができます。
前述したように、頻度が最も増加しているタスクは、リーダーシップ、マネジメント、監督でした。これらのタスクを 6 つの観点で検討することで、変化の理由が理解できます。例えば、異なる状況にあるさまざまな従業員を管理するには、それぞれに応じた対応が必要です。そうした対応は、標準的なルールではなく、人間の判断によって導かれます。さらに、複雑な変化への対応や、パフォーマンスに関する困難な対話では、高度な感情的配慮が求められます。こうした領域で最も力を発揮するのは人間です。一方で、最も減少している定型的な事務作業は、AI が得意とする領域です。標準化されたルールに基づいて、大量処理を高速で実行できるからです。
まとめ
今後も AI は、仕事で何が可能になるかを変えていくでしょう。しかし、仕事のあるべき姿を決めるのは AI ではありません。それは、従業員、マネージャー、組織が行うべき設計上の選択です。そのように捉える企業、つまり、再設計の判断基準を、人間の本質的な強みと人間の体験を向上させる要素に置く企業は、未来の働き方に適応するだけにとどまりません。未来の働き方を方向付けることになるでしょう。
今年後半に公開予定の調査レポート完全版では、これらの示唆ををさらに掘り下げ、HR テクノロジーの今後の方向性についても考察します。続報にご期待ください。