Lufthansa Technik: 航空機部品の荷捌きや輸送の自動化を推進して増大する要件に対応

故障部品を輸送する国際的な資材物流プロセスの合理化
Lufthansa Technik AG は、商用、VIP 用、特殊用途の航空機への保守、修理、整備、改造のサービスを提供する、業界トップクラスの企業です。同社は、デジタル化の取り組みの一環として、故障部品の資材物流プロセスの自動化を推進する必要がありました。その実現のために SAP Build Process Automation ソリューションを導入し、手作業の削減と取引量の増加を実現しました。
| 業種 | 地域 | 企業規模 | パートナー |
| 貨物、輸送、物流 – 保守、修理、整備 | ハンブルク(ドイツ) | 従業員数 22,290 人 | Lufthansa Industry Solutions |
従業員数を増やさずに取引量を増加
SAP Build Process Automation によって統合されるデータソース
倉庫管理プロジェクト開発担当、Lufthansa Technik Logistik Services
保守、修理、整備サービスにおける国際的な資材物流の合理化
Lufthansa Technik AG は、商用から VIP 用、特殊用途に至るさまざまな民間航空機の保守、修理、整備 (MRO) を手がける業界屈指の企業です。こうした MRO 企業や航空会社の物流を一手に引き受ける大手企業の一つが Lufthansa Technik Logistik Services 社です。Lufthansa Technik グループの物流のエキスパートである同社は、国際物流の専門知識やスキルと、航空分野に対する深い理解を兼ね備えています。航空機部品の保管や荷捌きから、緊急の輸送依頼への対応、エンジンその他の大型貨物をはじめとするさまざまな輸送サービスなど、そのポートフォリオは多岐にわたります。
MRO の領域では、修理が必要な部品を、世界のさまざまな地域から、やはり世界各地に散在する修理工場まで輸送、配達しています。部品を修理するタイミングや場所の判断は容易ではありません。故障部品を修理できる工場、修理部品の保管場所またはサプライヤーを、整備を待つ航空機の近くで見つける必要があります。さらに、発送元から発送先に至る経路に含まれる国々の法規制に従って、部品を通関させなければなりません。迅速な通関のために、適切な物流請負会社を選定するとともに、その会社と税関に必要な文書を提供する必要もあります。
こうした輸送プロセスには、SAP ERP Central Component (SAP ECC)、SAP のテクノロジーによって構築され SAP ECC に統合されたカスタム輸送管理アプリケーション、DHLや FedEx などの運送会社の Web サイトなど、最大 10 種類もの SAP およびサードパーティーのアプリケーションが関与していました。これら異なるシステムをまたぐトランザクションには、手作業のプロセスが含まれます。
Lufthansa Technik 社の資材物流業務は、極めて高い専門知識を備えたチームが管理し、Microsoft Excel と、複数のユーザー言語で実装された現地の IT 機器やソフトウェアを使用して、手作業で行われていました。このため、処理を要するトランザクション数の増大に対応するために規模を拡大しようにも、適切な資格を持つスタッフの雇用と訓練が追いつかないという問題に直面していました。煩雑なプロセスに加え、入り組んだシステムも問題の解決を困難にしていました。
さらに、資材の輸入と輸送に関する輸入管理システム (ICS2) プログラムの変更に基づいて EU 税関が課した新しい規制により、輸送業者に事前に渡すデータのデジタル化をさらに推進する必要がありました。Lufthansa Technik 社では、業務の拡大に合わせて、手作業を削減するとともに変化し続ける規制に対応できるシステムを求める声が高まり、プロセスとシステムアーキテクチャーの改善と最適化に集中する必要が生じていました。その解決策の一つと目されたのが、プロセスの自動化です。
SAP アーキテクチャー委員会、Lufthansa Technik AG
多様なデータソースからのデータの収集と入力
1998 年から続く SAP との長年のパートナーシップにより、Lufthansa Technik 社では、業務管理、生産、資材供給、輸送、購買、MRO、人事などの領域を対象とする一元化された IT システムの構築に SAP ソフトウェアを使用しています。今回の目標アーキテクチャーは、2020 年に策定された同社の SAP デジタルソリューションロードマップに基づいて定義されました。現在、SAP Integration Suite、SAP Analytics Cloud をはじめとする SAP Business Technology Platform (SAP BTP) の各種ソリューションを使用しながら、SAP ECC から SAP S/4HANA への移行プロセスも進行中です。
Lufthansa Technik 社の国際的な資材物流プロセスには、修理が必要な部品、その発送先、出荷状況のほか、輸送と通関に必要なドキュメントに関するデータの管理が含まれます。同社は、このプロセスの中で、複数のソースからデータを収集してカスタム輸送管理アプリケーションに入力するステップが、プロセスのスループット拡大の鍵になることに気付きました。このステップを自動化するために選ばれたのが SAP Build Process Automation ソリューションです。社内で提供可能な他の自動化ソリューションを差し置いて SAP ソリューションが選ばれたのは、SAP やサードパーティーのアプリケーションと連携するための事前設定要件がすべて満たされていたからです。SAP ECC(SAP GUI インターフェース装備)、API インターフェース、Web サイト、Microsoft Excel という 4 種類のデータソースと適切に統合できるのです。これによって、マスターリスト、ポータル、輸送業者と接続し、そこから情報を収集し、そのデータに基づいて輸送管理アプリ内の情報更新が可能になります。
Lufthansa Technik 社は、導入時に SAP Services and Support によるガイダンスを利用しました。Lufthansa Industry Solutions からのアドバイスも有効でした。Lufthansa Industry Solutions 社は、ドイツおよび中央ヨーロッパ地域を中心に、複数の支社の顧客にデジタル化のパートナーとしてサービスを提供している IT 企業です。SAP Build Process Automation ソリューションのメリットを生かせるプロジェクト、製品、サービスが他にもないかという検討は現在も続いており、その候補の一つが倉庫管理です。このソリューションは Lufthansa Technik 社の、より大きなデジタル変革プロジェクトの重要な柱の一つである SAP BTP の一部です。このソフトウェアを使用すれば、世界の Lufthansa Technik グループ企業で稼働する広範な SAP ソフトウェアランドスケープのセキュリティを強化し、信頼性を高めるとともに、将来に備えることができます。アプリケーション開発の領域では、Lufthansa Industry Solutions 社も SAP Business Application Studio や SAP Build Apps ツールなどのローコードソリューションを検討中です。
倉庫管理プロジェクト開発担当、Lufthansa Technik Logistik Services
取引量の増加を実現するため、手作業にかかる時間を短縮
ローコード、ノーコード機能を活用して SAP Build Process Automation を短期間で導入しました。このソリューションによって SAP およびサードパーティーシステムの間で、資材物流プロセスのデータ収集および入力作業を自動化でき、スタッフによる手作業の工数、ミスの件数、処理時間を削減できます。故障部品の輸送予約を担当する専門チームは、その専門知識が必要とされる業務だけに集中できるようになり、ビジネスの成長に合わせて 40% 以上、取引量を増加させることができました。
ソリューション導入の全体的なメリットとしては、資材物流プロセスのシンプル化と効率向上、各種 IT システムとの円滑な統合が挙げられるでしょう。スタッフが資材物流プロセス内のデータを変更する際の、セキュリティと柔軟性に関する要件も満たされています。Lufthansa Technik 社は、さまざまな変更が必要となる他の複雑で重要なプロセスで使用できるテンプレートも手に入れました。プロジェクトの組織とプロセス実装を通して、企業間のコラボレーションやイノベーションも生まれています。また、SAP のベストプラクティスも活用しています。
SAP イノベーションエクセレンスセンター、Lufthansa Industry Solutions
主要パートナー
Lufthansa Industry Solutions 社は、Lufthansa Technik グループ内の 2 つの主要 IT サービスプロバイダーの一つであり、SAP とは 1997 年以来パートナー関係にあります。物流、製造、自動車、エネルギー、ヘルスケアなど、多くの業種の顧客に対して、業務プロセスのデジタル化および自動化のサポートも提供しています。同社の 2,400 名にのぼる専門家は、技術的ノウハウと、プロセスや業界に関する知識を兼ね備えています。