
ANSTO:オーストラリアの原子力科学と研究能力の堅牢性を確立
SAP とともに歩む ANSTO のジャーニー
過去 70 年にわたり、Australian Nuclear Science and Technology Organisation (ANSTO) は、原子力科学技術をオーストラリアの全国民の利益のために活用してきました。専門性や重要性が非常に高い分野であるため、スキルを備えた人材の育成や定着は、ANSTO にとって最優先事項の 1 つとなっています。ANSTO は職員のサポートや管理を効果的に実現するため、SAP SuccessFactors ソリューションへのアップグレードを行いました。
| 業種 | 地域 | 企業規模 |
| 官公庁 | シドニー、メルボルン(オーストラリア) | 職員数 1,300 名 |
50% 未満だったマネージャーのエンゲージメントが改善。
プラットフォームが人材のあらゆる側面を管理します。
人材・パフォーマンス・能力開発担当ゼネラルマネージャー、Australian Nuclear Science and Technology Organisation (ANSTO)
オーストラリアの豊かな未来を担う人材の管理と定着
ANSTO は、オーストラリアの原子力科学技術に関する最も困難な課題に対処するという、重要な役割を果たしています。研究や核医学の医薬品の生産、多様なコミュニティに加えオーストラリア政府や各種産業、教育機関への助言など、さまざまな使命を担う組織です。
核医学では、癌などの疾病や症状の診断や段階づけ、治療に、ラジオアイソトープとして知られる少量の放射性物質を使用します。ANSTO は最大 12,000 件の処置に対応できる医薬品を毎週生産し、さまざまな処置や試験のために、オーストラリアの 250 以上の病院および診療所に送付しています。オーストラリアの核医学の医薬品に使用されるラジオアイソトープの 75 ~ 80% は、シドニーに所在する ANSTO のルーカスハイツキャンパスのものです。
また、ANSTO は材料の研究を通じて生産やリソースの分野でも重要な役割を果たしており、高速鉄道や電動輸送機器の開発に貢献しています。
インフラストラクチャーへの投資が 10 億豪ドルを超え、350 名を上回る専任の研究者を擁する ANSTO は、オーストラリアの科学研究やイノベーションを支える、欠くことのできない存在となっています。
ANSTO の担うさまざまな使命や重要性を考慮すると、職員の独自性や原子力に関する専門知識および能力にとってきわめて重要なのが、ANSTO の人材プールの育成、維持、後任計画です。中でも力を入れているのが、外部市場で需要の高い、専門性に優れた人材を見極め、採用し、組織に定着させることです。
その独自性のために、ANSTO 職員の在籍期間は、ほかの多くの組織よりも大幅に長期化しています。職員が退職してしまうと、ナレッジの喪失を埋めることが困難な場合もあります。スキルセットの開発やキャリアの一層の成長を求め、人材がほかの分野や企業へ転職してしまうこともリスクです。これは、組織と原子力研究の能力の両面で、ANSTO に短期的および長期的な悪影響を及ぼします。
ANSTO が職員の引き継ぎに用いるプロセスは、静的なスプレッドシート上に手作業で保存されたデータに依存していましたが、陳腐化して有効性もありませんでした。職員のこれまでの経験がプロセス内で可視化されず、現場の管理者やその他の主要な意思決定者には重要なスキルが見えないこともしばしばありました。
後任計画は人事上のプロセスと見なされていたため、付加価値を生み出し、専門知識にギャップが生じることを防ぐ可能性を秘めたビジネスアクティビティとは考えられていなかったのです。その結果、学習やパフォーマンス管理の機能は、別々のタスクとして進められることになってしまいました。このため、意思決定の整合性が損なわれ、成果の高い職員が後任者として候補に挙がらず、キャリア開発リソースの最適な割り当てが実現されない事態などが生じました。
職員のライフサイクルやスキルセットの制約に直面した ANSTO では、人材育成と後任計画プロセスの連携が取れていませんでした。こうした課題を解消し、人材や人事プロセスの管理を改善するため、ANSTO は SAP SuccessFactors ソリューションを導入しました。
人材・パフォーマンス・能力開発担当ゼネラルマネージャー、Australian Nuclear Science and Technology Organisation (ANSTO)
職員のエンゲージメントとインサイトを通じて成功を実現
ANSTO は SAP SuccessFactors ソリューションの導入により、複数の具体的なメリットを得ることができました。このソリューションは、データの可視性や職員の後任計画に関する主な課題を解消しました。
また、SAP SuccessFactors ソリューションを活用することで、ANSTO 職員のライフサイクル全体が、統合されたシステムで維持されるようになりました。これには、SAP SuccessFactors Recruiting、SAP SuccessFactors Performance & Goals、SAP SuccessFactors Learning、SAP SuccessFactors Succession & Development ソリューションが含まれます。また、すべての重要な役職について、あらかじめ後任計画を策定できるようになりました。システムが後任の候補者を提案し、さらなるスキル開発によるメリットを享受できる職員を特定します。
後任計画を管理者の重要な責務とした結果、あらゆる役職の管理者が専門知識を円滑に継承することに対して主体性や責任を持つようになりました。SAP SuccessFactors ソリューションのビジネスダッシュボードには、組織内の重要な役職すべての現在の人材プールの状態が表示されます。このため、関連性のある職員のデータや特定された後継者の情報すべてについて、意思決定者は完全な可視性を常に得ることができます。
SAP SuccessFactors ソリューションを組み込むことで、職員のスキルや業績をしっかりと評価できるようになります。職員の職歴や資格、キャリア開発の目標が関連性のある管理者に確実に表示されるようになるため、プロフィールの完成度の向上に向けて職員を動機づけることができます。
また、SAP SuccessFactors ソリューションの優れたユーザーエクスペリエンスは管理者の自主性を促し、自らの裁量でスキルについての理解を深められる状態を生み出します。現在も、より詳細で豊富なデータが取得されており、パフォーマンスや後任計画プロセスの効率化が進んでいます。評価が標準化され、候補者の順位付けが自動化されることで、採用プロセスの品質が向上します。
全体として、引き継ぎに関する意思決定は情報に基づくより直観的なプロセスとなり、是正措置のトリガーも簡素化されます。シニアマネジメント層は、ANSTO の人材関連の戦略と組織のニーズをうまく整合させられるようになります。
人材・パフォーマンス・能力開発担当ゼネラルマネージャー、Australian Nuclear Science and Technology Organisation (ANSTO)
ANSTO の未来を支える
ANSTO が引き継ぎのプランニングを導入したのは比較的最近のことですが、管理者も職員も同様に、SAP SuccessFactors ソリューションとの有意義なユーザーエンゲージメントがすでに増加していることが確認されています。重要な人材やスキルの定着という目標に向け、建設的な一歩を踏み出しました。
ソリューション導入以前には、管理者の後任計画プロセスとのエンゲージメントは 50% 未満でしたが、現在では 94% と飛躍的に改善しました。現場管理者は、育成上のニーズの特定や適切な研修の準備などを含め、後任のためのアクションプランを作成し始めています。特定の役職の後任を洗い出すのにかかる時間も、数日から数秒へとたちまち短縮されました。
人材・パフォーマンス・能力開発担当ゼネラルマネージャー、Australian Nuclear Science and Technology Organisation (ANSTO)
職員のエンゲージメントを改善することで、ナレッジとイノベーションを実現
ANSTO は今、キャリアワークシートの導入に向けた準備を進めています。これは、職員が現時点での自分の能力や、特定のキャリアパスを達成するために今後伸ばす必要があるスキルを把握する際に役立つものです。ANSTO は職員に自身の育成のニーズを理解するよう促すことを通じて、職員がさらなる積極性を身につけ、自身のキャリアパスをしっかりとコントロールできるようになり、その結果として組織との関係強化やスキルの向上を実現してほしいと考えています。
ANSTO は機能の導入やさらなるデジタル化の推進により、SAP SuccessFactors ソリューションのユーザーエクスペリエンス改善に引き続き取り組む予定です。SAP SuccessFactors ソリューションのユーザーコミュニティに積極的に参加し、ベストプラクティスについての情報を得たり、逆に発信したりすることで、組織の将来性に対する長期的なメリットを実現し、原子力の科学研究を推進しています。ANSTO は、SAP やその他の組織とのつながりは、ナレッジやイノベーションを実現する重要な要素であると考えています。こうした関係性は、改善に向けた継続的なプロセスにおいて今後も不可欠な役割を果たすでしょう。